ナノスケールの計測技術および第一原理計算に基づく生成エネルギー計算技術をはじめとしてナノ構造解析の周辺分野が目覚ましく進展している。このような技術にもとづき、様々な元素および結晶構造の膨大な組み合わせに対して、それぞれ物理特性や材料特性が計測・計算されている。こうした状況において、新規の材料設計のために、現在所有するデータから有用な情報の効率的な抽出、また、未知材料の特性値を予測するデータ解析法に対する期待が高まっている。本課題では、以下の2つに大別される課題に取り組んだ。 (1)未知材料の効率的な物性値評価のための機械学習法 材料の結晶構造から物性値を予測する教師あり学習法を開発した。特に、計画班A01(ア)豊浦和明先生や公募班の竹内一郎教授らとともに、プロトン伝導体の伝導経路を効率的に発見する手法をベイズ最適化のアプローチによって開発した。また、連携研究者の桑原彰秀博士とともに、点欠陥を含む結晶構造の物性値予測法を開発するために、様々な結晶構造記述子を評価した。 (2)走査型電子顕微分光計測データから元素構造の自動マッピング法 STEM-EELS計測のような走査型電子顕微分光計則データは膨大な量のデータであるため、自動的かつ効率的なデータ解析法が求められる。この問題に対して、本研究では非負値行列分解のアプローチにより、計測スペクトルデータを用いて、試料上の元素成分を自動的にマッピングし、同時に、各成分のスペクトルを同定する手法を開発した。本取り組みは、計画班A01(ウ)の武藤俊介教授との共同研究であり、実際のデータを提供していただき、手法の評価を行った。
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