スペクトロスコピックCXDIの実現可能性について計算機シミュレーションを用いて検討した。CXDIにより高い空間分解能を有するXAFSイメージングが原理的に可能であるが実験的には容易でない。なぜなら、XAFSスペクトルに現れる微細構造は変化が微弱であり、極めて高い感度でCXDI実験を行う必要があるからである。また、高い空間分解能を達成するためには、微弱な高角散乱強度を高い信号帯雑音比で取得する必要がある。サイズ500nmの鉄粒子からなるモデルについて、CXDIの計算機シミュレーションを行った。入射エネルギーを鉄のK吸収端を含む7.11 keVから7.15 keVの間の9点とし、回折強度パターンの強度ダイナミックレンジを4桁から8桁まで変化させた。位相回復計算により試料像の再構成を行った結果、強度ダイナミックレンジが6桁以上のとき鮮明な再構成像が得られ、複素透過関数から求まる吸収係数は入力値との誤差が3%程度であった。また、吸収スペクトルに見られる特徴的な微細構造を良く再現していた。このシミュレーション結果より、スペクトロスコピックCXDI実現には従来の実験と比較して1000倍程度大きなダイナミックレンジで回折強度パターンを取得する必要があることが判明した。
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