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2014 年度 実績報告書

ゲル基質の軟らかさと粘性を利用した上皮シートの3次元組織構築

公募研究

研究領域超高速バイオアセンブラ
研究課題/領域番号 26106702
研究機関北海道大学

研究代表者

芳賀 永  北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (00292045)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード細胞・組織 / 上皮細胞シート / 粘弾性培養基質 / 腸管絨毛構造 / 自己組織化
研究実績の概要

本研究課題は,ゲル基質を用いて上皮細胞に腸管絨毛のような立体構造(チューリップハット様の構造)を形成させるシステムを構築することを目的とする.研究代表者はこれまでに,上皮細胞をマトリゲル上に播種すると,上皮シートの辺縁部が内側に収縮し,ゲル基質を変形させながら回転運動を行い,絨毛構造を形成することを発見した.本研究では,この現象を組織再生の基礎技術とするために,①上皮シートの辺縁部が収縮する機構,②ゲル基質の粘性がもたらす効果,③シート全体が回転運動する機構の3点に焦点を当てて研究をすすめた.
平成26年度では,交付申請書における研究実施計画に従って,上皮シートを取り囲むアクトミオシン束の収縮力発生機構について調べた.アクトミオシンを構成するII型ミオシンの軽鎖(MRLC)には2つのリン酸化部位が存在し,1重リン酸化状態よりも2重リン酸化状態の方が大きな収縮力を発生させることが研究代表者のこれまでの研究で明らかとなっている.そこで,本研究ではMRLCのリン酸化機構に着目して実験を行なった.MRLCのリン酸化酵素であるROCKをターゲットとした阻害剤実験の結果,チューリップハット様の構造が形成されないことが明らかとなった.このことから,ROCKのシグナル経路が関与することが明らかとなった.
さらに,研究代表者はこれまでに,上皮細胞の集団がチューリップハットのような立体構造を形成する際,培養基質であるマトリゲルが変形することを見出している.マトリゲルは架橋構造をほとんどもたないため,僅かな力で塑性変形する.つまり,粘性の寄与が大きいゲルである.そこで,平成26年度では,粘性による効果を調べるために,シリコーンゲルなど化学組成によって粘性係数,弾性率を任意に変えることができるゲル基質を用いて上皮細胞の培養を行なった.しかしながら,粘性係数を任意にコントロールするには至っていない.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度では,研究実施計画をほぼすべて遂行することができた.上皮シートの辺縁部が収縮する機構について,ROCKのシグナル経路が関与することを明らかにした.さらに,これまであまり注目されていなかったZIPKというリン酸化酵素も上皮シートの組織形成に関与するという予備的結果を得ることができた.MRLCのリン酸化を感知するFRETプローブを用いた蛍光ライブイメージングにも成功した.その一方で,粘性係数を任意にコントロールする培養基質の確立にはいたっていない.

今後の研究の推進方策

平成27年度では,研究実施計画をさらに推し進めるべく,リーダー細胞の出現がシート全体の回転運動に必要であること,ひいてはチューリップハット構造の形成に必須であることを明らかにすることを目指す.リーダー細胞は上皮間葉転移(EMT)によって生じた細胞であることが強く示唆される.そこで,EMTを誘発する成長因子の発現に着目する.例えば,TGF-β1受容体の阻害剤(SB431542)を投与することで,リーダー細胞の出現が抑えられ,シート全体の回転運動が停止し,チューリップハット構造の形成が阻害されるかどうか検証する.
さらに,粘性係数を任意にコントロールする培養基質の確立を目指す.具体的には,マトリゲルに架橋剤を混ぜる,あるいはシリコーンオイルに架橋剤を混ぜるなどといった方法を試みる.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Leader Cells Regulate Collective Cell Migration via Rac Activation in the Downstream Signaling of Integrin Beta1 and PI3K2015

    • 著者名/発表者名
      N.Yamaguchi, T.Mizutani, K.Kawabata, and H.Haga
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 5 ページ: 7656,1-8

    • DOI

      10.1038/srep07656

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Compressive Stress Induces Dephosphorylation of the Myosin Regulatory Light Chain via RhoA Phosphorylation by the Adenylyl Cyclase/Protein Kinase A Signaling Pathway2015

    • 著者名/発表者名
      K.Takemoto, S.Ishihara, T.Mizutani, K.Kawabata, and H.Haga
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10 ページ: e0117937,1-17

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0117937

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Epithelial Sheet Folding Induces Lumen Formation by Madin-Darby Canine Kidney Cells in a Collagen Gel2014

    • 著者名/発表者名
      S.Ishida, R.Tanaka, N.Yamaguchi, G.Ogata, T.Mizutani, K.Kawabata, and H.Haga
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 9 ページ: e99655,1-11

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0099655

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] An Improved Method for Western Blotting When Extracting Proteins from Mammalian Cells Cultured on a Collagen Gel under Serum-free Conditions2014

    • 著者名/発表者名
      S.Ishihara, T.Mizutani, K.Kawabata, and H.Haga
    • 雑誌名

      Cytotechnology

      巻: 09 Jul. ページ: 1-8

    • DOI

      10.1007-s10616-014-9766-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Collective migration of Madin-Darby canine kidney cells led by leader cells is dependent on Rac1,integrin beta1,and PI3K2014

    • 著者名/発表者名
      N.Yamaguchi, T.Mizutani, K.Kawabata, and H.Haga
    • 学会等名
      第66回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      奈良県新公会堂(奈良県春日野町)
    • 年月日
      2014-06-11 – 2014-06-13
  • [備考] 細胞ダイナミクス科学研究室 研究紹介

    • URL

      http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g3/research

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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