本研究では、複雑な階層構造を持つ巨大再生組織の高速構築システムの開発を目的としています。平成26年度は多管構造を持つコラーゲンゲル(MCCG)を用いた複雑な階層構造を持つ巨大再生肝がん組織の構築技術を確立しました。平成27年度は、構築した再生組織の構造と機能の相関を解明することで機能的な巨大再生組織の構築原理を確立することと(項目1)、巨大再生組織の自動化と高速化を実現すること(項目2)を達成目標としました。 項目1の成果:MCCGの構造制御技術とMCCGを用いたHepG2細胞の三次元細胞培養技術を組み合わせることで、様々な構造のミニ再生肝がん組織を構築しました。このミニ再生肝がん組織のアルブミン生成能を評価したところ、構造との有意な相関は観測されませんでした。この結果は、構築するミニ再生肝がん組織の構造によらずに一定の機能を持った再生組織が構築されることを示唆しております。肝組織の特徴をより再現するために、HepG2細胞だけでなく類洞内皮細胞(HSEC)と肝星細胞(HSC)をMCCG中で三次元培養したところ、培養期間の経過とともに組織の大きさや携帯が変化する現象を見出しました。この現象はHepG2だけを培養したときには観察されなかった現象で、HSECやHSCによる再生組織の組織リモデリング作用によって引き起こされたものと考えられます。このことは、MCCGの多管構造を各細胞の初期配置決定のための鋳型として利用し、そこから細胞自身の働きによって最適な組織形態が構築される可能性を示唆しており、新しい三次元再生組織の構築原理の確立につながると期待されます。 項目2の成果:シリンジポンプと三次元アクチュエーターを組み合わせることによってミニ再生組織を25個/分の速度で自動構築するシステムを開発することに成功しました。このことにより、オペレーターの技術的習熟度によらない再現性のよいミニ再生組織の高速構築が可能となりました。
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