研究実績の概要 |
胚発生過程では、細胞集団が移動することで器官のような3次元の形態を形成します。このとき、個々の細胞はランダムウォークするのではなく何らかの規則によって運動しなければなりません。本研究課題では、「細胞-基質間」、「細胞-細胞間」の力学場測定を通じて、細胞や細胞集団が3次元運動する際の法則を明らかにしてゆきます。本年度は、蛍光タンパク質融合細胞間接着タンパク質を細胞に発現させ、ライブイメージングを行いました。細胞間接着部間の蛍光強度プロファイルを解析することで、細胞間接着距離の時間変化つまり歪を定量化可能の方法を確立しました。その手法を用いて、細胞-細胞間が離れたもしくは縮まったという情報と細胞運動との対応を解析しています。また、細胞集団が運動する際の集団の先頭にくる細胞に着目し、後続の細胞との違いを生化学因子の観点から調べました。その結果、Rac1が先頭の細胞で有意に活性化され、さらに、インテグリンb1、PI3Kといったタンパク質も先頭の細胞の端に局在化することが判明しました。これらの因子に対する阻害剤を用いたところ、細胞集団の運動が阻害されました(2015 N. Yamaguchi, Scientific Reports)。また、個々の細胞に圧縮刺激(歪)を加えた時に、細胞がどのような応答を示すのかを調べました。細胞を圧縮すると、細胞の力を調節しているミオシン調節軽鎖の活性が減少しました。さらにミオシン調節軽鎖の活性の減少をもたらしたシグナル因子を探索したところ、RhoAのリン酸化が重要であることを明らかにしました(2015 K. Takemoto, Plos One)。
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