公募研究
再生医療や細胞治療分野においては品質管理の行き届いた細胞を大量に培養し、適切な方法でアセンブルする必要があるが、この際の細胞の品質が構築する組織の機能に大きく影響を及ぼす。細胞の機能に大きく影響を与える因子として我々は培養環境中での酸化ストレスにいち早く着目してきた。2014年度は細胞培養環境において生じる酸化ストレスがミトコンドリアの膜電位を低下させ細胞の性質を変化させている事を明らかにし、その問題解決法として、酸化ストレスを消去する高分子材料を培養機材にコーティングした。開発した高分子をコーティングすることでミトコンドリアの膜電位を良好な状態で保つことを可能にした。研究成果は論文としてまとめる(Journal of Biomedical Materials Research, Part A, in press. (doi: 10.1002/jbm.a.35419))とともに特許出願を行った。またこれまで浮遊細胞を用いて行ってきた実験を接着細胞に展開させた。抗体を共固定することにより、特異的に細胞を接着させることを試みた。高分子及び抗体の密度を変化させることにより最適なバイオ界面の構築を試みた。プリミティブな結果ではあるが、望みの細胞を選別する事が可能となる事を示唆する結果が得られた。さらにこれまではミトコンドリアの膜電位により細胞の状態を評価していたが、より細胞の機能に着目した評価として細胞の未分化性に着目し、評価を行った。構築したバイオ界面によりミトコンドリアの膜電位を良好な状態で保っていると細胞の未分化性も維持していることがわかった。合成高分子により細胞の未分化性を維持しているという報告はこれまでになく細胞培養技術の新しいプラットホームとなりうる技術であると考えている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は細胞培養環境において生じる過剰な酸化ストレスがミトコンドリアの膜電位を乱し、細胞の性質を変化させていることを確認し、酸化ストレスを消去することでミトコンドリアの膜電位を保っている事を明らかにした。構築した細胞培養システムに関しては論文化とともに特許出願を行ったためおおむね順調に進んでいると考えている。
2014年度の後半においてミトコンドリアの膜電位を良好な状態で保っていると未分化細胞の未分化性を保持しているというプリミティブな結果が得られた。この現象をより明確にする。さらに領域内での共同研究を推し進め、他の研究者との連携を深める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Biomedical Materials Research, Part A
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1002/jbm.a.35419