研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
26106714
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
益田 泰輔 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30431513)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / バイオテクノロジー |
研究実績の概要 |
生体組織の生物学的・機械的特性を解明するために,3次元生体組織の再構築に関して様々な研究が行われている.再構築した組織は,生体内と同様の形態や機能を獲得するために力学的刺激が重要であることがよく知られている.細胞はこの力学刺激を感知し,応答することで組織形成および機能維持を示すことが知られている.本研究は,アセンブリした組織を長期機能維持させるためには,酸素および栄養の供給源を確保するためにも外部と必ず“繋ぐ”必要があるという着想に基づき,外部の潅流培養システムと融合することを前提に3次元組織構造体を作製し,機械システムと繋いだバイニックシミュレータを開発する.H26年度は,生体血流環境を模倣した潅流培養システムとLBL積層細胞法と積層細胞転写法を利用して作製した血管様管状組織体を融合させ,弾性線維の形成過程を評価し得るバイオニックシミュレータの構築を行った.潅流培養システムは培養器,遠心ポンプ,流量計,圧力センサ,リザーバーから構成され,生体内と同じ最大1 Paのせん断応力がかかるように,最大流量165 ml/min,最小流量116 ml/minを与えるものとし血管の脈動流を再現させた.マウス平滑筋細胞を用いて小口径血管組織を構築し,潅流培養後に全RNAを抽出し,リアルタイムRT-PCRにより弾性線維形成マーカであるFibrillin1,Fibrillin2,およびSM1のmRNAの発現から評価した.リアルタイムRT-PCR の結果,Fibrillin1,Fibrillin2,およびSM1のいずれにおいても,脈動流培養を行った場合に,静置培養,循環培養と比べ,最も発現量が高いことが観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にあった多層構造を有する小口径血管組織の構築に成功し,生体血流環境を模倣した潅流培養システムを確立したこと.さらには,申請書段階には計画がなかった,生分解性ポリマーを外膜としたアセンブリ法を提案し,組織弾性の担保から生体血管への吻合を可能を示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度までに,生体内環境に近い力学刺激を与えることにより,血管様多層組織構造体中の平滑筋細胞の弾性線維が有意に形成したことが伺えた.今後,血管様多層組織構造体に対して脈動流による長期負荷を与え,組織内の弾性線維の形成を物理的手法と生化学的手法から検討を行っていく.さらには,生体から摘出した心臓を用いたOrgan-Explant-Chipに対して,虚血疾患の心臓モデルの作製し,心臓潅流モデルと血管潅流モデルの融合に着手していく.また,血管吻合後のリアルタイム観察から,心疾患や動脈硬化・動脈瘤などの疾患モデルに対する,薬効評価等を試みる.
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