公募研究
細胞移動は個体の発生過程のみならず、免疫系やがん転移、創傷治癒など様々な領域で見られる普遍的な細胞の性質である。脳の発生過程においては、神経細胞が自らの誕生した部位から特定の機能部位へと自律的に移動していく。神経細胞移動の不全は機能的な神経回路網の形成を阻害し、脳奇形や様々な神経疾患の原因となると考えられている。移動中の神経細胞は移動方向へ先導突起と呼ばれる細長い神経突起を伸ばし、その内部を細胞核が移動することで細胞移動を行う。本研究では、移動中神経細胞の細胞核を細管内を通過する粘弾性体とみなし、その動態を詳細に解析することで核移動を駆動する力学的メカニズムおよび細胞内分子機構を明らかにすることを目的とする。高速共焦点顕微鏡を用いて移動中神経細胞の細胞核を高い時間・空間分解能でタイムラプス撮影することに成功しており、その結果から細胞核が移動に伴って回転・変形することを見出した。デジタル画像解析手法を用いた定量的な解析から、核の回転・変形が核移動の方向やダイナミクスと高い相関を持つことを明らかにし、これらの核の挙動が核移動の際に作用する力を反映していると考えられた。また、牽引力顕微鏡法を用いて核移動と細胞が足場に及ぼす力を同時に計測する系を確立し、先導突起上の局所において核を牽引する力が発生していることを示唆する結果を得た。さらにこれらの系において移動に関与すると考えられる分子を薬理学的・分子生物学的手法を用いて阻害し、核移動を制御する分子機構の探索を行なった。また、神経細胞にナノファイバー基質上を移動させることで配向性を持った神経線維を形成させ、さらにその上で他の神経細胞を培養することで生体内と類似した直交した神経回路網の形成をin vitro下で再現することに成功した。今後はさらにこの培養系を積層することで三次元神経回路網をin vitro下で再現することを目指す。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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