研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
26106722
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小島 伸彦 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (90342956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝臓 / 類洞 / 肝細胞索 / 毛細胆管 / スフェロイド / 三次元培養 / 組織工学 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本年は、計画1:類洞・肝細胞索に加えて、毛細胆管構造を備えた「微細構造化3次元肝組織」の構築について取り組んだ。 本プロジェクトの最大のポイントは3次元的な肝組織、いわゆる肝スフェロイドにおける「毛細胆管構造」の再構築である。従来の研究内容から少なくとも2次元培養環境では、マウスの胎仔肝細胞が高い毛細胆管再構築能を持っていることが分かっていた。「高い」というのは、成熟した肝細胞ではコラーゲンやマトリゲルを重層しないと毛細胆管が効率良く出てこないのに対して、マウス胎仔肝細胞はそのような細胞外マトリクス(ECM)を重層しなくても、毛細胆管構造を作りだすことができるためである。毛細胆管を自発的につくることができるのは、細胞極性を構築する能力に優れているからだと考えられる。本年を通じてマウス胎仔肝細胞を用いて、このスフェロイドの内部に類洞、肝細胞索、毛細胆管構造を作り込む挑戦を続けた。 結果としては、いまだはっきりとした毛細胆管構造を構築するには至っておらず、この問題を解決するためのいくつかの方策を提案してその効果を検証している。一つ目は、ECMの積極的な利用についてである。類洞構造や肝細胞索構造の構築に影響を与えないように、肝スフェロイド内部に薄膜状にECMを充填する方法を開発し特許申請を行った。この技術を使って、毛細胆管構築への影響を検討している。二つ目は、3次元培養環境下で細胞間接着に関わる分子の分解が促進されるという知見を得たため、この分子の分解を抑制するような試薬の利用を試みている。三つ目は、肝細胞の極性の獲得つまり毛細胆管の構築には特定の糖鎖が関与していることが知られており、このような糖鎖をビーズの表面に結合させて3次元組織内部の極性構造の構築を活性化し、毛細胆管の再構成につとめている。 なお、その他にも膵島や骨髄の再構築に取り組んで成果を得、外部発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年の末には毛細胆管構造を肝スフェロイド内部に再構築することを目標としていたが、以前毛細胆管構造を得るところまでは進んでいない。しかしながらこの問題を解決するために新規技術を開発し特許申請にまで至っている。他にも細胞間接着に関与する分子の予期せぬ消化の発見とその解決法、毛細胆管の構築に重要な役割を果たす糖鎖利用方法の確立など、少なくとも三種類の新たな技術を考案しており、これら新技術によって、今後問題が解決できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度達成できていない毛細胆管構造の構築について研究を進める。方法については「研究実績の概要」においてすでに述べているが、毛細胆管構造の構築に直接関係がある「細胞極性」の獲得について、少なくとも第1ステップであるアドヘレンス・ジャンクションの構築は達成できていることが確認できている。このように毛細胆管構築への各ステップを検証することで、将来的に組織構造の制御をより的確に行えるようになると考えている。
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