公募研究
皮膚は体の表面を覆う最大の臓器であり、また組織細胞の治療応用が最も進んだ臓器でもある。事故や熱傷による皮膚組織の欠損に対して、患者自身の皮膚や同種・異種の培養皮膚が医療現場で利用されている。しかし実際に用いられている移植用の培養皮膚は表皮ケラチノサイトと真皮線維芽細胞による細胞シートで構成され、被覆・防護機能は果たせるものの、毛嚢や皮脂腺等の皮膚附属器を欠いている。このように創傷より治癒した皮膚が附属器を欠くことは生理的および美容的に大きな問題であり、毛嚢・皮脂腺・汗腺を有する正常により近いリアルな皮膚組織の供給が望まれている。マウス胎児皮膚より単一細胞として調整した表皮細胞と真皮細胞をヌードマウス背部皮膚にシリコンチャンバーを用いて移植すると、3 週間で毛嚢等附属器を有する完全な皮膚組織が形成された。しかしこのような皮膚組織の完全な再形成は、培養環境では残念ながら再現することができない。この研究班の横浜市立大学 武部 貴則准教授らはマウスに移植すると機能する肝臓組織を形成できる肝臓原基の作成に成功した。これは複数種の細胞が3次元構造 を形成しながら分化できる環境を保証することで、発生初期のプロセスを培養内で再現して臓器(組織)を形成させる方法である。この方法を参考にして、我々が妊娠16日目のマウス胎児皮膚より調製した表皮細胞、真皮細胞に血管内皮細胞と間葉系幹細胞を加えてマトリゲル上で混合培養したところ細胞が凝集し始め、72時間以内に層状の構造を有するスフェロイドを形成した。このスフェロイド形成には血管内皮細胞は必須ではなかったが、間葉系幹細胞は不可欠であった。また免疫染色の結果から、このスフェロイドの外層には表皮細胞が、内層には血管内皮細胞が分かれて分布していた。
2: おおむね順調に進展している
上皮-間葉インタラクションについての検討は、ほぼ予定とおりに進行している。また新たな展開として、皮膚附属器を培養内で作製するための、組織原基の作製に成功している。再構成皮膚や培養皮膚組織の実験に供した際に、この組織原基由来の附属器ができるかどうかを検討している。
マウス皮膚再構成モデルを用いて、上皮-間葉細胞で異なる胎齢の組み合わせが皮膚附属器形成にどのような影響があるかを検討する。またin vitroで作製した皮膚組織原基に附属器形成能があるかどうか、マウス皮膚再構成モデルやin vitroで作製する皮膚組織などを用いて検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
J Biol Chem
巻: 289 ページ: 23389-23402
10.1074/jbc.M114.573071