公募研究
本研究の目的は、研究代表者らが開発してきた3次元ナノ空間分解走査型光電子顕微分光装置「3D nano-ESCA」を拡張して、デバイス動作中の過渡過程における異種接合界面や空間不均一性を探索する「オペランドナノスペクトルイメージング」を実現し、これを原子層デバイスの分析に活用することでデバイス性能向上のための指針を提示することである。初年度である今年度は、以下の項目を行った。(1) 電圧印加機構と半導体パラメーターの導入:バイアス電圧やドレイン電圧を印加できるように、試料ホルダーと試料ステージを改良した。また、半導体デバイスの輸送特性測定と顕微分光測定を同時に行えるように、半導体パラメーターアナライザーを配線に組み込んだ。(2) バイアス電圧印加条件下でのグラフェン電界効果トランジス(GFET)内局所電子状態のoperando解析:GFETのチャネル上のピンポイントコアレベルスペクトルに対するゲート電圧依存性を測定した。その結果、C 1sのコアレベルがピークシフトを起こし、シフト量とゲート電圧の関係性は、グラフェン特有の線形分散を再現するものであった。(3) GFET における異種接合界面状態の系統的分析(基板/チャネル界面):基板処理方法が異なる親水性基板と疎水性基板を用いてGFETを作製し、金属電極/チャネル接合界面近傍をラインスキャンしたところ、接触抵抗の原因となる電荷移動領域の大きさが異なることが実証された。上記の成果により、論文を2本出版し(1本執筆中あり)、2件の招待講演を行った。
2: おおむね順調に進展している
予定通り年度初頭に電圧印加機構・半導体パラメーターの導入が完了し、実際にこれらを使用したデバイスのオペランド分析が行われている。3DnanoESCAを活用した分析に関しては順調に進行しているが、当初提案していた、グラフェンエッジ状態の直接観察とナノグラフェンのデバイス応用に関しては困難であったため、新学術領域内の共同研究を拡充させるよう方針を転換した。
昨年度のうちに装置セットアップとGFETの基礎的な電子状態解析を行っているので、本年度は原子層デバイスの系統的分析(原子層の種類、層数、界面状態など)に取り組む。また新学術領域内で、3DnanoESCAによる分析が可能なデバイスや材料を持つグループとの共同研究を推進する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 5173
10.1038/srep05173
Applied Physics Express
巻: 7 ページ: 065101
10.7567/APEX.7.065101
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2013/130531/