研究実績の概要 |
平成27年度は平成26年度に引き続き, 超強磁場領域でのグラフェンの磁気光学測定を行うとともに、グラフェンにとどまらず他の種類の原子層物質の合成を行っている研究グループと連携し, 超強磁場領域での磁気光学測定を試みることを目標としていた。この点に関しては、原子層科学領域外ではあるが新しく2グループとの共同研究を開始した。 台湾国立交通大学のLiu教授らのグループと、原子層物質である遷移金属ダイカルコゲナイド(WSe2、MoS2)の磁気光学測定による励起子およびバンドエッジがもたらす光吸収スペクトルの磁場による変化を調べた。 また、東大生産研究所の近藤研究室と共同研究を開始した。有機無機ハイブリッドの半導体材料であるメチルアンモニウムヨウ化鉛に関して、薄膜試料の磁気光吸収測定を行った。同物質は次世代太陽電池の材料候補として近年着目されており、光応答を担う励起子の束縛エネルギーに関する知見は重要であるが、様々な束縛エネルギーの値が報告されておりコンセンサスが得られていない。この問題の解明のため現在実験を継続中である。 原子層物質に関する国内外グループとの新たな共同研究がスタートした一方、グラフェンの磁気光学応答に関する研究は、データの解釈のために大阪大学の浅野教授をセミナーに招待した折に議論し、平成28年度の国際会議で発表をする予定である。目標の一つであった電圧バイアス下でのサイクロトロン共鳴測定までは実験技術的難しさから到達できなかったが、その前段階の実験として超強磁場領域における単層グラフェンの輸送特性を、非接触高周波測定によって調べることに成功した。異なるランダウ準位にキャリアが移り変わる際に生じる抵抗の変化と考えられる応答を観測し、この結果は平成27年度の国際会議RPGR2015(最近のグラフェンの研究に関する会議)において口頭発表を行った。
|