研究実績の概要 |
平成27年度は平成26年度に引き続き複層グラフェンの電子ドープ時の電子状態変化についての研究、及び複層グラフェン以外の物質について基盤が原子層物質に与える影響や電界応答、電子状態の制御に関する研究を行った。成果課題として「新規層状物質群MXenesの表面原子吸着による電子状態制御の予測」が挙げられる。2011年に発表された新規二次元層状物質群MXenesは、遷移金属原子によるM siteと炭素または窒素からなるX siteからなる層状物質群であり、多様な組成を取るため物質設計の観点からも非常に重要な物質群である。我々は表面終端構造による当該物質の電子状態制御の可能性を第一原理計算によって検討した。表面吸着子にはH, Li, Naを採用した。その結果、MXene酸化物Ti2CO2は0.44 eVのバンドギャップを持っているが、表面にH, Li, Naを吸着させた原子モデルでは、安定吸着サイトや吸着種の違いによらず、金属的なバンド構造をもつことがわかった。この結果は、化学ドーピングや電界制御ドーピングより簡便なドープ量制御や吸着量による電気伝導性制御能性を示唆しており、今後の電子素子への応用可能性を大きく広げる結果だと言える。 その他の成果として、 (1)二層グラフェンへの電子ドープが与えるバンド構造変化の理論的見積もりに成功 (2)単層Germaneneの電子特性を保つ原子層基盤の発見 (3)SiC(0001)基板上のエピタキシャルGrapeheneの構造及び電子状態の理論評価 があげられる。特に(1)の成果は当該新学術領域内の共同研究として進められた。これらの成果は連携研究者成果を含め論文3報, 学会発表7件の成果を上げた。また本プロジェクト研究成果物として1報の論文を現在作成中である。
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