研究領域 | 原子層科学 |
研究課題/領域番号 |
26107516
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河野 行雄 東京工業大学, 量子ナノエレクトロニクス研究センター, 准教授 (90334250)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | テラヘルツ |
研究実績の概要 |
テラヘルツ(THz)技術は、天文学・固体物理学・生体分子分光学などの基礎分野からセキュリティ・情報通信・医療などの実用分野に至る幅広い分野での応用が期待されている。ところが、この帯域は光と電波の間に挟まれているため、他帯域に比べ発展が遅れている。グラフェンは発見当初より、電子デバイス・光デバイスの両面からTHzデバイスへの応用が着目されてきた。この開拓は非常に魅力的であると考えられるものの、このテーマの研究(THz検出器、THz光源、THz周波数帯動作の高速トランジスタ等への応用)は端緒についたばかりである。本研究では、グラフェンの高い潜在能力を用いて、新しいTHz機能素子の創出やその背後にある物理現象の探求を目指す。今年度は、グラフェンと同種のカーボン系薄膜として高配向カーボンナノチューブアレイを用いた研究に着手した(試料はライス大学より提供)。THzデバイスの中でも室温動作で高性能なTHz検出器は強く求められている技術である。現在の室温検出器としては、焦電検出器、ゴーレイセル、ショットキーバリアダイオード等が知られているが、感度が低いことが問題となっている。本研究では、広い周波数帯域で高いTHz吸光度を持つ高密度・高配向カーボンナノチューブアレイを用いることで、室温におけるTHz・赤外光検出を達成した。さらに、高配向性を利用して、THz・赤外光領域における偏光子として機能させることも可能であることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カーボン系薄膜の一種である、高密度・高配向カーボンナノチューブアレイを用いて、室温におけるTHz・赤外光検出を達成したことは応用上大きな意義を持つ。またこの素子では、低温下あるいは磁場下で別の機構によるTHz応答を示すことがわかった。これらの結果は、来年度グラフェンによる研究へと拡張する上でも大きな一歩となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、カーボンナノチューブアレイによるTHz・赤外光応答の温度・磁場依存性について研究し、検出メカニズムについての知見を得る。また、同様の観点から、グラフェンに対しても同種の研究を進める。カーボンナノチューブアレイとグラフェンのいずれにおいても伝導チャネルの形状効果に着目した研究を行う。
|