研究領域 | 原子層科学 |
研究課題/領域番号 |
26107519
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣戸 聡 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30547427)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフェン / 直接ホウ素化 / グラフェン量子ドット / 多環芳香族炭化水素 |
研究実績の概要 |
H26年度はグラフェンモデル分子である多環芳香族炭化水素の官能基化および変換技術の開発、およびそれに伴う物性変化の検出に係る研究を推進した。具体的にはディスク状の原子層フラグメント分子であるヘキサベンゾコロネンのエッジ部分に導入したヒドロキシ基を足がかりに、酸化および求核付加反応を利用して硫黄およびハロゲン置換基の位置選択的導入法を開発した。それぞれの生成物は単結晶X線構造解析により明らかにしており、置換基の大きさによって平面が歪むことを明らかにした。この成果は日本化学会誌Chem. Lett.に報告した。 また、ペリレンの位置選択的修飾反応の開発にも成功し、エッジ部分に窒素を導入した原子層フラグメント分子の合成にも成功した。生成物はX線結晶構造解析により明らかにした。この結果は日本化学会誌Chem. Lett.に報告している。 さらに直線型の原子層フラグメント分子であるオリゴアセンにヒドロキシ基を導入して酸化すると対面型の二層構造が形成することを明らかにした。この二層構造は室温、空気中で安定に存在でき、エッジ修飾および酸化というプロセスで容易に二層構造が形成できることを示した結果と言える。さらに、骨格の伸張に伴い安定性が向上することを予備的に見いだしている。この成果は英国化学会誌Chem. Commun.に発表した。 また、さらに大きな単位であるグラフェン量子ドットのエッジ修飾反応も予備的に成功しており、精密有機合成によるグラフェン修飾の可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は主にグラフェンモデル分子の変換反応を行い一定の成果を上げた。さらに、研究計画に沿ってさらに大きな物質であるグラフェン量子ドットのエッジ修飾反応も挑戦し、精密有機合成が有用であるということを見いだしている。グラフェン量子ドットにおける研究は当該領域研究を通じて共同研究を展開し結果を導き出している研究であり、有効に研究領域を活用できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより大きな原子層であるグラフェン量子ドットの修飾反応およびそれによる物性の変化に注視した研究を展開する。一方で、グラフェン量子ドットの合成については未だ有効な合成法が開発されていないことが領域研究を通して分かってきた。そこで、領域研究において共同研究を展開し、まずサイズの揃ったグラフェン量子ドットの効率合成法の開発を行う。さらに、得られた量子ドットの遷移金属触媒による官能基導入法の開発、それに伴う発光特性の変化について明らかにする。
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