研究実績の概要 |
本研究では、透明で柔軟な全カーボン集積デバイスの高機能・高性能化に加え、素子特性安定化技術を創出することを目指している。本年度は、CNT薄膜のバイオセンサ応用開拓、グラフェン薄膜の大面積転写技術について検討した。 CNTバイオセンサについては、これまでに報告は数多くあるものの、一般的な溶液プロセスや素子プロセスに由来するCNT表面の汚染の影響については、センサ応用の場合には特に重要であるにもかかわらず、ほとんど調べられていない。本研究では、(1) ドライ転写プロセスによるCNT薄膜形成と、(2)素子プロセス中の保護膜導入により、清浄な表面を持つCNT薄膜バイオセンサをプラスチックフィルム上に実現した。作製したバイオセンサは、電気化学反応において、良好な面内均一性をもち、また、繰り返し計測において優れた安定性を示した。 大面積グラフェンの転写については、Cu箔上のCVDグラフェンをSi基板に転写するプロセスについて検討している。Cu箔両面にグラフェンが成長しているため、はじめに、片面のグラフェンを機械研磨により除去した。一般的なポリマー材料を用いた手法により、Si基板上にグラフェンが転写されたことを確認した。一方で、機械研磨に由来すると思われるパーティクルが多く、またしわも観察された。次に、機械研磨に代えてプラズマエッチングによるグラフェン除去を検討したところ、パーティクルが大幅に減少した。一方で、Cuエッチング後にも、微量なパーティクルがグラフェン上に残っていた。このパーティクルの組成をEDXを用いて分析したところ、Si, Ti, Mg, Alなどが検出された。Cu箔の不純物やCVD炉の石英管に由来すると思われ、今後、除去プロセスを検討する。
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