本研究では、我々が独自に展開してきた「難溶な結晶性有機半導体材料を、溶媒に可溶な前駆体から光照射または加熱により定量的に合成する前駆体法」を利用し、「原子層の合成法の確立」を目指し、幅の揃ったナノリボンをボトムアップに合成するためのペンタセンやノナセンユニットを設計合成や、含硫黄ノナセンなどのヘテロ原子を含むアセンユニットの合成と、基礎物性の評価を行うことを,目的として研究を展開してきた。 アセンユニットでは、ペンタセンユニットの大量合成が完成した。またヘプタセンユニットの合成にも着手し、現在引き続き合成中である。 一方含硫黄アセンユニットに関しても、ジチアノナセンの合成に成功した。しかし、電気化学的に酸化したところ、硫黄上ではなくテトラセン上で酸化反応が起こり、目的とした折れ曲がり構造から平面性の高い構造への変換と、それに伴うエレクトロクロミズムを実現することはできなかった。これは、テトラセン部位がHOMO準位となり、2電子酸化により、2つのテトラセンユニットがそれぞれ酸化されてしまうためであると考えられる。現在、これらの結果をもとに化合物のデザインを修正し、合成を継続中である。
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