公募研究
平成26年度は、主に遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)の高品質試料およびそのヘテロ構造作製に関する結晶成長技術の開発を進めた。1.高品質試料に関しては、高温での化学気相成長かつグラファイトのへき開面を成長基板として利用することで、結晶性の高い遷移金属ダイカルコゲナイド原子層を成長する技術を確立してきた。特に、単層の二硫化タングステン(WS2)単結晶においては、従来の試料と比較し、発光ピークの半値幅が79Kで8meV非常に狭く、さらにローレンツ型の形状を持つことが分かった。この結果は、従来のTMDC試料と比較し、欠陥や電荷不純物が非常に抑制された試料が生成したことを示している。また、ラマンスペクトルや発光スペクトルのシフトより、シリコン基板やサファイア基板に比べ、グラファイト上の試料では、格子歪みも抑制されていることが示唆された。同様の結果は二硫化モリブデン(MoS2)でも得られ、本手法は様々なTMDC試料の成長に適用できるといえる。2.ヘテロ構造の作製に関しては、化学気相成長法などにより、WS2/MoS2ヘテロ構造や、Mo1-xWxS2ヘテロ構造の直接合成法を確立してきた。Mo1-xWxS2については、高温では組成勾配の小さい単層Mo1-xWxS2合金が成長しやすく、低温では、組成の異なる単層Mo1-xWxS2が急峻な界面を持つヘテロ接合を形成することが明らかとなった。これらの結果は、温度による原料の供給レートの違いによると考えられる。本研究成果は、高品質TMDCヘテロ構造の実現に向けた基盤技術になると期待される。
2: おおむね順調に進展している
遷移金属ダイカルコゲナイドに関する高品質試料およびヘテロ構造の成長技術が確立してきており、研究が順調に進展しているといえる。
前年度の成果を発展させ、遷移金属ダイカルコゲナイドのヘテロ構造をグラファイト等の平坦な原子層基板の上に成長させる技術を開発する。また、作製した試料の光学特性や電気伝導特性などについて詳細な評価を進める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 2件)
ACS Nano
巻: 未定 ページ: 未定
10.1021/acsnano.5b00103
10.1021/nn507408m