近年、生体内において様々な機能を持つRNAが発見され非常に注目されている。我々はこれまでにRNAを高感度に検出可能な新たな核酸プローブであるインステムモレキュラービーコン(ISMB)の開発に成功している。本研究では更に高感度なプローブを開発することによって細胞内におけるRNAの蛍光イメージングを目指している。 昨年度までの成果により、Cy3を複数導入したインステムモレキュラービーコンの開発に成功した。今年度はこれまでの設計とは異なりステム構造不要な新たなリニアープローブの開発を目指した。具体的にはCy3と消光色素であるアゾ系色素との自発的会合を利用することによって、プローブ単独ではCy3の発光が消光することを期待した。それに対し、標的RNA存在下では色素ペアが解離することによってCy3の発光が観察されると期待される。実際にリニアープローブを合成し機能評価を行ったところ、プローブ単独ではCy3と消光色素が会合することによって蛍光が強く消光した。それに対し、標的RNAを添加したところCy3の強い発光が観察された。その結果、ターゲットの添加に伴う発光強度比は180倍となることが明らかとなった。 また、このプローブの細胞内における機能評価を行った。28S rRNAをターゲットとしたプローブを合成し、固定化細胞に添加して共焦点レーザー顕微鏡で観察を行ったところ、細胞質及び核小体から強い発光が観察された。このことは開発したプローブが洗浄操作不要なFISH(Fluorescence in situ hybridization)プローブとして機能することを示している。以上のように、従来の設計とは全く異なる新たなRNA検出プローブの開発に成功した。
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