公募研究
本年度は、エクソソームの抽出分離を可能とする新規ナノデバイスの開発を行った。エクソソームの抽出分離を可能とする新規ナノデバイスのナノ構造体として、これまでに開発してきたナノワイヤ構造体を選択した。エクソソームは細胞上清のみならず、血液や尿などにも存在するため、新規ナノデバイスの基板素材には、使い捨て可能なアクリル(PMMA)基板やシリコン基板を用いた。PMMA基板やシリコン基板上に微細流路を作製し、その流路内へナノワイヤ構造体を成長させる技術により、ナノデバイスの開発に成功した。本デバイスを用いることで表面が負に帯電する細胞上清中のエクソソームを抽出分離することに成功し、細胞培養上清中に1-100億個/mL存在するエクソソームを60%以上抽出分離することに成功した。また、エクソソームの抽出分離効率のさらなる上昇を目的とし、本年度は新たな構造体として、ナノワイヤ構造体から別のナノワイヤ構造体を枝のように分岐成長させたクリスマスツリーのような構造体を作製することに成功した。このクリスマスツリーナノワイヤ構造体は、1本のナノワイヤを幹として、幹のナノワイヤより枝のナノワイヤが10本以上成長していることを確認した。同様に、成長回数を繰り返す毎に元のナノワイヤの長さが長くなることも確認した。そのため、成長回数を1回増やす毎に少なくとも10本のナノワイヤが増え、最終的には10のN乗本(N: 成長回数)のナノワイヤとなること、ナノワイヤ構造体の密度と表面積も少なくとも10のN乗(N: 成長回数)に比例して多くなることが確認された。その後、微細流路内にこのクリスマスツリーナノワイヤ構造体を作製することに成功し、細胞培養上清中のエクソソームの高効率な抽出分離を達成した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、目標であったエクソソームの抽出分離を可能とする新規ナノデバイスの開発を行ったのに加え、ナノワイヤ構造体から別のナノワイヤ構造体を枝のように分岐成長させたクリスマスツリーのような構造体を作製した。エクソソームの抽出分離用新規ナノデバイスの開発では、使い捨て可能なアクリル(PMMA)基板やシリコン基板上に微細流路を作製し、その後、その流路内へナノワイヤ構造体を成長させることに成功した。また、ナノワイヤを成長させる際に結晶の成長核となる金属層の材料を変えることで、成長後のナノワイヤの直径や長さ、密度を制御することに成功した。このようにして作製した様々なナノワイヤ構造体を用いて、細胞上清中のエクソソームの抽出分離を行ったところ、クロムを成長核の金属層とすることで、エクソソームの分離抽出効率60%以上を達成した。また、クリスマスツリーナノワイヤ構造体を微細流路内に作製し、微細流路内のナノワイヤ構造体の密度と表面積を増加させることに成功した。そして、このクリスマスツリーナノワイヤ構造体を用いることで、細胞培養上清中に1-100億個/mL存在するエクソソームを高効率に抽出分離することにも成功している。これら上述の成果より、当初の計画以上に進展していると考えられる。
今後は、エクソソームの定量解析を進めるために、(1)エクソソームに内包されるmiRNA等の核酸を定量解析することが可能なナノデバイスと(2)エクソソーム表層の膜タンパク質を定量解析することが可能なナノデバイスを開発する。申請者が本年度に行った成果において、ナノワイヤにより抽出分離したエクソソームに内包されるmiRNA等の核酸解析と、エクソソーム表層の膜タンパク質の解析に成功している。しかし、(1)内包されるmiRNA等の核酸解析においては、既存のナノワイヤデバイスを用いる手法では溶液中の一部エクソソームしか抽出分離できないこと、(2)表層の膜タンパク質の解析においては、すべての膜タンパク質の解析を行うには感度が十分でないこと、の問題点があった。そこで、(1)溶液中からの高効率エクソソーム抽出分離&内包されるmiRNA等の核酸定量解析と、(2)表層にある全膜タンパク質の定量解析を行うこと、が可能な新規ナノデバイスをクリスマスツリーナノワイヤ構造体を用いて創製し、エクソソームを定量解析することを目的とする。(1)の課題においては、本年度に作製したデバイスを用いてエクソソームを高効率に抽出分離し、そのエクソソームからmiRNA等の核酸が全て抽出されるかどうかを検討する。(2)の課題においては、クリスマスツリーナノワイヤ構造体を内部に作製した微細流路を複数準備し、バーコードのように配置し、それぞれのナノワイヤ構造体を用いて異なる種類の膜タンパク質を検出することで蛍光輝度から膜タンパク質の量を、バーコードの種類から膜タンパク質の種類を解析し、エクソソーム表層の全膜タンパク質の定量解析を行う。
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Micro Total Analysis Systems 2014
巻: 1 ページ: 680-682
巻: 1 ページ: 2017-2019