研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
26107714
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
許 岩 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (90593898)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノチャネル / 細胞死 / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞死を1細胞かつ1分子レベルで定量的に理解するため、1細胞分析に最適かつ1細胞内環境の特徴を有するナノチャネルを用いて、細胞死に関わる最も重要なタンパク質の1つであるシトクロムc(cytochrome c)の1分子計測法を開発する。アポトーシスにおけるシトクロムcを1細胞かつ1分子レベルで定量することは、細胞死を起こす原点の究明に迫り、細胞死の初期段階における化学反応様式の定量的な理解を可能とし、ナノメディシン研究目標である細胞環境における分子反応への理解の推進に大きく貢献できる。 平成26年度では、シトクロムcの1分子計測チップを設計し、その作製条件を検討した。実験で明らかにした作製条件に基づいて、独自に開発したガラスナノチャネルの低温または室温接合法(従来は高温1000℃が必要)とナノチャネルで光の回折限界を超える自在なナノパターニング法、という二つの世界初の技術を利用し、シトクロムcの1分子計測チップの作製ができた。さらに、このチップを用いて、シトクロムcの1分子計測の全ステップを試し、提案した手法に基づくシトクロムcの1分子計測に関する知見が得られ始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、研究実績の概要でも述べたように、シトクロムcの1分子計測チップの作製のために必要かつ不可欠である条件を明らかにするとともに、シトクロムcの1分子計測チップを用いてシトクロムcの1分子計測の全ステップを行っており、若干の方針の変更はあったものの、当初の目的はほぼ達成した。また、チップの作製はプロセスが多く大変時間がかかるが、一つのチップは一度の実験しかできない。再利用ができないため、シトクロムcの検量線を明らかにするには、たくさんのチップの作製が必要である。計画スケジュール通りにプロジェクトを推進するために、当初の計画を推進しながら、シトクロムcの1分子計測チップの再生方法を提案し、実験で検討した。外部で未発表のため詳細はここでは割愛するが、チップの再生条件を明らかにし、作製したチップを三回以上再利用可能とした。この手法は、シトクロムcの1分子計測チップに限らずに、あらゆるガラスナノ流体チップに適合していると考えられ、未熟なnanofluidics分野をより効率的・エコ的に発展させることに貢献できると期待される。従って、平成26年度は、当初計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、シトクロムcの1分子計測チップを用いてシトクロムcの1分子検出の確認、検量濃度範囲の確定、任意濃度のシトクロムcの1分子計測に取り組む。具体的には、シトクロムcや、シトクロムc捕捉用抗体、シトクロムc検出用抗体を使用し、提案の手法に基づくシトクロムcの1分子検出の原理をポアソン統計理論よりさらに確認する。また、様々な濃度のシトクロムcを用いて実験を行い、1分子計測の濃度検出線形範囲を確定する。さらに、確定した1分子計測の濃度検出線形範囲に基づいて、任意濃度のシトクロムcの検出を行う。
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