本研究では、細胞死を1分子精度1細胞レベルで定量的に理解するために、1細胞分析に最適かつ1細胞内環境の特徴を有するナノチャネルを用いて、細胞死に関わる最も重要なタンパク質の1つであるシトクロムc(cytochrome c)の1分子計測法を開発する。 外部で未発表のため詳細はここでは割愛するが、本年度は、昨年度に確立した技術で作製した1分子計測ナノ流体チップを用いて、提案の手法に基づいて、検出濃度の検討に取り組み、シトクロムcの1分子検出に成功し、本研究の目的をほぼ達成した。さらに、長時間・高コストをかけて作製した1分子計測チップを繰り返し使用するため、昨年度末に検討を始まった1分子計測チップの再生方法に関して、今年度は6段階熱化学的分解による再生工程を最適化して確立した。一度使われた1分子計測チップが再利用できるようになり、1分子計測チップのみならず、ナノ流体デバイスに関する研究の効率面及び経済面を促進した。この結果は、化学マイクロ・ナノシステム分野で最高峰の学術誌であるLab on a Chipに発表され、さらに裏表紙(Issue 15、2015)を飾った。また、超微量の1細胞内容物(ピコリットルレベル、pL = 10-12 L)をハンドリングするために、フェムトリットル(fL = 10-15 L)レベルの流体を自在に制御する技術を確立した。この研究成果は、シトクロムcの1分子計測チップを用いた1細胞内容物の網羅的な分析に利用できるだけではなく、化学、バイオなどのプロセスに画期的な革新をもたらすと予想される。
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