公募研究
細胞生物学はもちろん、細胞を治療や診断の対象にしようとする革新的な医療技術や新しい産業技術においては、空間的にも時間的にもめまぐるしく変化する細胞内環境を計測すること、細胞内分子や器官の働きを連続して捉えること、の2つが同時に求められる。本研究では、細胞内環境に感受性を持ち、環境を記述するのに十分な空間分解能とリアルタイムで計測が可能な時間分解能とを併せ持つ新しいプローブ、またこれらプローブに適した計測技術をセットで開発することを目指した。本年度に我々は、提案していたボトムアップ型ナノセンサーの開発に成功した。タンパク質一分子の計測から細胞の活動を定量化することを目ざし、細胞内クリック反応を経て四個の蛍光色素が単一鎖アビジンに結合したナノセンサーを作成する、ボトムアップな方法を提案した。一つの蛍光ナノセンサーの時空間分解能は、使用した光学顕微鏡の条件下では約1Hzのときおよそ10 nmだった。細胞内の任意の部位の局所的な環境を、標的一分子のレベルで計測する基盤技術を提供すると期待される。特に「環境」パラメータとして「温度」を扱う研究では、動物個体での温度イメージングを指向した蛍光ナノ粒子型の温度センサーの開発も行い、蛍光ナノ粒子型の温度計をショウジョウバエの幼虫へ経口投与して、モデル生物に限らず微小な個体で体内温度をマッピングする手法を提案した。また一細胞温度計測において、計算と実験との間にある5桁のギャップを説明した。開発した細胞内温度センサーを用いてナノ粒子が神経細胞内に生じる温度分布を計測する実験が発展的に展開し、ピエゾ特性を持つナノ粒子と超音波を組合わせて神経細胞を非接触に刺激する手法を提案することができた。局所温度勾配が細胞に与える影響をさらに調べたところ、球状の細胞および神経細胞の新しい応答を見いだした。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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