研究領域 | 宇宙における分子進化:星間雲から原始惑星系へ |
研究課題/領域番号 |
26108503
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 今日子 北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(RPD) (70377993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木星形成 / 衝撃波 / コンドリュール / 結晶質シリケイト / 微惑星 |
研究実績の概要 |
原始太陽系円盤内において木星との共鳴に伴い発生する強い微惑星衝撃波は、ダストや微惑星の加熱による熱変性、蒸発、再凝縮を引き起こす。本研究では微惑星の軌道進化と物質モデルを組み合わせ、太陽系始原物質の進化について明らかにすることを目的とする。平成26年度は木星形成後の円盤内の微惑星の軌道進化計算を行い、ダストや微惑星への影響について検討した。その結果、原始惑星系円盤内において木星との共鳴に伴い発生する強い微惑星衝撃波は、ダストや微惑星を強く加熱することが分かった。軌道計算を行う際には木星重力の他、これまで考慮されていなかった円盤ガスの重力相互作用も考慮した。従来の研究では小惑星帯付近において衝撃波の速度は最大でも秒速8kmだったが、秒速12km以上のさらに強い衝撃波が発生することが明らかになった。隕石中の主要な構成粒子であるコンドリュールは融解を経験しており、その加熱源の候補として衝撃波加熱があるが、その形成条件は小惑星帯付近で秒速10km以上が必要とされており、従来の研究では不十分であった。しかし、今回の研究で得られた衝撃波速度はコンドリュール形成の条件を十分に満たしている。我々の結果は木星形成後に小惑星帯でコンドリュールが自然に形成されうることを示す。また微惑星の一部は太陽系外側領域に散乱されることから彗星内での結晶質シリケイトの存在も説明できる可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
隕石の主要構成物質であり融解を経験したと考えられるコンドリュールは太陽系形成時の情報を保持しており、この起源の解明は惑星物質科学の重要な問題となっている。コンドリュールを形成するための加熱源の有力な候補として衝撃波加熱があるが、その形成条件に必要な衝撃波速度は小惑星帯付近では秒速10km以上であり、この条件が実際に満たされたのかは明らかではなかった。本研究では木星形成後の円盤内の微惑星の軌道進化計算を行い、ダストや微惑星への影響について検討し、木星重力の他に新たに円盤ガスの重力相互作用も考慮することにより、従来の研究では最大で秒速8kmだった衝撃波速度が、小惑星帯付近において秒速12km以上の強い衝撃波が発生することを明らかにした。この加熱機構により、木星形成後に小惑星帯でコンドリュールが自然に形成されうることが明らかになった。本結果はAstrophysical Journal Lettersに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で得られた微惑星の軌道計算結果とダストと微惑星の熱変性、蒸発、再凝縮を統合したモデルとを組み合わせることにより、微惑星衝撃波よる物質化学的な影響について検討する。力学的に微惑星衝撃波の領域を限定することにより、コンドリュールの生成場所や効率および年代について詳細に比較する。また衝撃波による微惑星蒸発の効果はスノーラインより外側にミクロンサイズのダストが大量に放出される可能性を示す。これは微惑星形成後の惑星形成期において、赤外線の放出源となるダスト物質が円盤ガス内で再増加することを示唆し、原始惑星系円盤の観測の解釈に大きな影響を与える可能性がある。微惑星蒸発により生じるダスト量や分子が、原始惑星系円盤の観測に与える影響について検討する。隕石の分析や原始惑星系円盤の観測と詳細に照らし合わせることにより、力学進化と物質進化の関係と全体像を得たい。
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