宇宙空間での鉱物表面反応と分子進化過程の解明を目的に、鉱物表面のモデルとなる鉱物組成クラスターと気体分子との反応を観測した。 まず、昨年度に引き続き、ケイ酸塩鉱物の基本構造を形成するシリコン酸化物を取り上げ、酸化ケイ素クラスター負イオン(SinOm-)とCOとの反応実験を行った。昨年度の研究で、n : m = 1 : 2に対して酸素過剰なm >= 2n+1の組成のクラスターに於いてCO吸着反応速度が大きいことを明らかにした。今年度は、さらに理論計算を用いて反応サイトの探究を進めた。その結果、1つもしくは2つのO原子を共有して隣り合うSiO4四面体上のdangling O原子ペアの存在が、CO吸着に重要な役割を果たすことが明らかとなった。COからdangling O原子に負電荷が供与されることで、結合が形成される。一方で、m =< 2nのクラスターでは3配位のSiが反応サイトとなるが、反応サイトの選択性は局在する半占軌道(SOMO)の位置に支配されることが分かった。 また、SinOm-とH2Oとの反応の観測を行い、H2OはHとOHに解離して吸着することが分かった。さらに、MglSiOm-とCOおよびH2Oとの反応の観測を行った。H2Oとの反応では、O2の生成が示唆された。 以上のように、一連の研究により、分子雲と原始惑星系円盤での鉱物表面への分子吸着と触媒反応のメカニズムの解明に向け、非常に重要な成果が得られた。
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