研究領域 | 宇宙における分子進化:星間雲から原始惑星系へ |
研究課題/領域番号 |
26108514
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (30260194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 星間物質化学 / 原子分子物理 / 極低温原子反応 / フラーレン |
研究実績の概要 |
既存のKセルオーブンを利用して、蒸着基板を格納しておく準備真空槽と、基板に蒸着を行う蒸着真空槽を持つC60 蒸着装置を製作した。基板を蒸着真空槽内へ挿入し、加熱によってC60を基板へ蒸着する。準備真空槽内で基板の脱ガス等の作業を行い、蒸着真空槽では基板の脱ガス等の作業を行う間に蒸着に用いるC60粉末試料の予備加熱を行うことができるようにした。蒸着の試行を行った後、低温下での赤外吸収分光測定に用いる基板に、C60の赤外吸収分光には十分な厚さを持つ蒸着膜を作成した。 作成されたC60蒸着基板を、水素原子照射部を備えた赤外吸収分光測定装置のクライオスタットに取り付け、真空かつ低温下でのC60の赤外吸収スペクトルを取得することができた。その後、水素原子源で生成した水素原子を用いて、真空槽内にて低温下でのC60蒸着膜への水素原子照射実験を行った。C60の赤外活性振動に相当する吸収線の強度やスペクトル形状の変化を指標にして、C60への水素付加反応が起きているか否かを判別しようとした。しかし、少しの吸収線強度やスペクトル形状の変化は見られたものの、C60への水素付加反応の確認に至るような確実な変化は得られなかった。これはC60の吸収線をとらえるのに十分大きな厚さを想定してC60蒸着膜を作成したことで蒸着膜の厚さが比較的大きくなり、C60の吸収線強度やスペクトル形状の変化に相対的に鈍感となっていたためと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C60 蒸着装置の製作において、準備真空層と蒸着真空槽を分離する機構の検討・設計に当初計画よりも時間を要したため、厚さや作成条件の異なるC60蒸着膜を用いて水素原子照射実験を行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
非常に薄いC60蒸着膜も作成できるように蒸着装置の条件を検討し、また必要な改良を加える。薄いC60薄膜試料を既存の水素原子照射部を備えた赤外吸収分光測定装置に取り付け、C60への水素付加反応の確認実験を行う。また、基板温度による違いを観測してみる。さらに、水素原子照射を行ったC60薄膜試料の表面付近で化学的変化が起きているか確認するために、表面に敏感な他の分析手法を検討して分析を試みる。これらの水素付加の確認を行った後、反応の進行の時間変化などの測定を行う予定である。
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