キラル磁性体の起源であるジャロシンスキー・守谷相互作用を理解するため、その相互作用の起源の一つであるスピン軌道相互作用に着目し、2015年度は以下の研究を行った。 1)磁気量子臨界点近傍での反対称スピン軌道相互作用の繰り込み効果: 量子臨界点近傍での反対称スピン軌道相互作用のくりこみ効果に関して議論を行い、強磁性量子臨界点近傍では反対称スピン軌道相互作用は大きくくりこまれること、反強磁性量子臨界点では小さくくりこまれることを明らかにした。また、このくりこみ効果はフェルミ面の形状に反映され、ドハース・ファンアルフェン効果で観測可能であることを提案した。本研究内容はJ.Phys.Soc.Jpn.の2015年4月号に掲載され、Editors’ choiceになった。さらに、本研究内容と、5電子系における電子状態のこれまでの研究成果との総合解説が、雑誌、固体物理(アグネ技術センター)の2016年2月号において掲載された。 2)強磁性体と重い原子を含んだ金属界面におけるジャロシンスキー・守谷相互作用の導出: 5d電子を含んだ重い金属と強磁性体との界面に生じるラシュバ効果に着目し、強磁性体内のスピン間のジャロシンスキー・守谷相互作用をRKKY相互作用のプロセスを応用することで導出した。また、ジャロシンスキー・守谷相互作用のラシュバ効果依存性も明らかにした。(日本物理学会誌欧文紙J.Phys.Soc.Jpn.に投稿中)
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