研究領域 | 超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
26108719
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業 |
研究代表者 |
大石 一城 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業, その他部局等, 副主任研究員 (60414611)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気秩序 / カイラリティ / カイラル磁性体 / ミュオンスピン回転(μSR) / 超低速ミュオン / ミュオン |
研究実績の概要 |
「超低速ミュオン顕微鏡」は、深さ方向にnm分解能の局所性(高エネルギー分解能)及び走査性(高空間分解能)を持つことから、試料内の局所磁性評価、更には試料全体の実空間磁場分布の観測が可能である。本研究では、「超低速ミュオン顕微鏡」を用いて、(1)らせん磁気構造のヘリシティの検出及び、(2)ラセミ双晶におけるらせん磁気構造カイラリティの実空間3次元イメージングを行い、結晶構造と磁性のカイラリティ結合の検証を行うことを目的としている。 平成25年度は、(1)らせん磁気構造のヘリシティ検出のため、結晶構造のカイラリティが単一ドメインであるCsCuCl3の右手系単結晶(空間群: P6122)及び左手系単結晶(P6522)を用いてバルクミュオンスピン回転測定を行った。その結果、右手系及び左手系単結晶それぞれで観測したミュオンスピン回転周波数の温度依存性が一致することから、カイラルらせん磁気構造のヘリシティは各々の結晶で異なる(鏡像関係にある)ことを明らかにした。更には、右手系単結晶と左手系単結晶で得られた回転シグナルの位相が異なることが判明し、内部磁場分布のシミュレーションと比較することにより磁気構造のヘリシティをバルクミュオンスピン回転測定から議論できる可能性を示唆した。 一方、「超低速ミュオン顕微鏡」による測定は、J-PARC物質・生命科学実験施設に建設している超低速ミュオンビームラインの立ち上げに時間がかかっており、今年度実験を実施することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バルク試料によるミュオンスピン回転測定は予定通り実施できており、成果を挙げている。 一方、J-PARC 物質・生命科学実験施設 第2実験ホールにおける火災により、超低速ミュオンビームラインの立ち上げが遅れており、「超低速ミュオン顕微鏡」を用いた実験がまだ実施できていない。1日も早く超低速ミュオンビームラインを立ち上げていただき、「超低速ミュオン顕微鏡」による実験を実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実施した、バルク試料でのミュオンスピン回転測定は引き続き実施する。J-PARCでの実験不実行の事態を避けるために、既に平成27年9月にPSIにてバルクミュオンスピン回転測定のビームタイムを確保している。 平成26年度は、上述のバルクミュオン測定に加えて、「超低速ミュオン顕微鏡」によるカイラルらせん磁気構造のカイラリティの決定を行う。らせん磁気構造の周期は数十nmと予測されているため、nmの深さ分解能を有する超低速ミュオンビームをらせん軸に平行に入射し、ミュオンの止まる深さを制御することで、深さに対する内部磁場の変化から、磁気スピンが時計回りもしくは反時計回りのどちら方向に配列しているかを観測し、ヘリシティを決定する。 また、超低速ミュオン顕微鏡の高エネルギー・高空間分解能を活用して、ラセミ双晶の試料における結晶構造及びらせん磁気構造のカイラリティドメインの実空間3次元イメージングを行う。
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