公募研究
(1)水素貯蔵材料である水素化マグネシウム(MgH2)の水素脱離反応中の水素ダイナミクスをミュオンスピン回転緩和(muSR)法で捉える実験のこれまでの成果をまとめ、国際学会、国際シンポジウムで発表した。継続の実験は、予定していたビームタイムがキャンセルになったため、実施できなかった。水素の固体中の拡散が水素脱離温度を決める重要な要素であることを示唆する結果が期待され、将来の超低速ミュオンを用いた表面近傍の測定の際の、基礎的、かつ有益なデータとなる。次年度に必ず実施し、成果としてまとめられるように進める。(2)MgH2と同様に高い水素重量密度を持つ、水素化ホウ素化合物における水素ダイナミクスを調べる実験を現在準備している。これまでにMgH2の系で取り組んできたmuSR法が適応できるかを確かめ、水素挙動測定技術としての確立を目指す。この実験を提案し、採択された。2年目に実験が実施できるように、実験系の構築と試料容器の改良を装置担当者と相談し進めている。(3)超低速ミュオンを用いた、試料表面の水素ダイナミクス測定のための薄膜の成膜条件の検討を行った。水素雰囲気中でマグネシウムをスパッタすることで、MgH2の薄膜を成膜することができた。一方で、成膜上の課題も明確になった。今後、より均一で密度の高い薄膜が得られるよう取り組む。(4)イオンのダイナミクスをミュオンで捉える手法は、リチウムイオン電池材料中のリチウムイオンの拡散挙動の研究が測定例も多く先行している。そのため、水素ダイナミクスを調べる上で、リチウムイオンの固体内拡散の研究は重要である。リチウムイオン伝導体のイオン拡散のみならず、イオン拡散と電子物性との相関を調べた。
2: おおむね順調に進展している
(1)水素貯蔵材料の水素脱離反応中の水素ダイナミクスをmuSRで捉える実験のこれまでの成果をまとめ、国際学会や国際シンポジウムで発表した。(2)J-PARCのみならず、同じパルスミュオン施設である英国ISISのビームタイムも獲得し、水素貯蔵材料の水素脱離反応過程の実験に備えている。
本研究課題は当初の計画通り、おおむね順調に進んでいるため、研究計画の推進に大きな変更点はない。しかしながらJ-PARCの事故により、実験が実施できず、研究計画の一部を変更せざるをえなかった。その点に関して、以下のとおり対策を講じた。すなわち、一施設のみに依存せず、J-PARCと同じパルスミュオンビームが使用できる英国ISISでの実験を検討した。ISISには水素貯蔵材料の研究の実績があり、装置担当者も経験があるため、研究の進展が期待される。MgH2の継続実験は2年目後半のビームタイムの獲得を目指し、提案を提出した。ホウ素化水素化合物の実験は、既に提案が採択され、実験のための実験系とセルの構築を進めている。また、超低速ミュオン顕微鏡を用いた実験のための薄膜の成膜は、1年目の取り組みにより成膜条件がある程度絞れた。さらに緻密なよい薄膜を生成する取り組みを行う。2年目中に、超低速ミュオン顕微鏡を用いた実験のための薄膜成膜条件を確立する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Journal of Physics Conference Series
巻: 551 ページ: 012036-012041
10.1088/1742-6596/551/1/012036