研究領域 | 3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開 |
研究課題/領域番号 |
26109501
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松村 彰彦 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 助教 (90600453)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線 / 粒子線 / 量子イメージング / 医学物理 / 量子ビーム科学 |
研究実績の概要 |
炭素線を用いた重粒子線がん治療は、より患者の生活の質を重視した低侵襲のがん治療法として近年大きな注目を集めている。実際の治療では、最大で光速の70%程度まで加速された炭素イオンを様々な機器を通して散乱させて、線量分布が標的内で均一になるような照射野を形成している。この治療用炭素線場は、核反応等の物理プロセスを経て発生した様々なエネルギーの放射線が混在している。本研究では、治療用炭素線場の線量・線質を同時に測定でき、臨床線量の直接推定が可能な、Silicon-On-Insulator(SOI)技術を用いたイメージセンサー(SOPHIAS)の炭素線に対する応答調査を行った。 実験は群馬大学重粒子線医学研究センターの垂直コースで行った。本研究では、イメージセンサーの放射線損傷や同一ピクセル内に複数の放射線が同時に入射するのを防ぐため、ビーム強度を下げる必要があった。そこで、ビーム強度を下げた状態で、線量モニタやリファレンスで用いる平行平板型電離箱の健全性の確認を行い、治療で用いるビーム強度のおよそ1/40の強度で使用することを決定した。様々な水等価深で測定をするため、検出器の上流に水深可変型の水槽を設置し、モノエネルギーの炭素線を用いて電離箱とSOIイメージセンサーでデータ収集を行った。解析の結果、SOIイメージセンサーでもブラッグピークを観測できることがわかった。一方で、実験中に加速器のトラブルによりデータ収集効率が予想より低かったため、外部トリガーを用いて自動でデータ収集を行えるように改造を行った。その結果、データ収集効率を4倍程度改善でき、高統計でのデータ収集に成功した。検出器内で生成された電子ホール対の再結合や拡散の影響と推測される事象が確認でき、現在デバイスシミュレータ等との比較検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん治療用炭素線場におけるセンサーの基本的なパラメータの決定や実験環境の整備は予定通り遂行できている。一方で、当初予定されていなかった外部トリガーを用いた効率的なデータ収集系の構築、及び動作確認を含む再実験を行ったため、当初計画に対して2、3ヶ月遅れている。しかしながら、平成27年度中の炭素線用イメージセンサの製作、性能評価には影響のない範囲であり、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に行った実験結果の解析、およびモンテカルロシミュレーションやデバイスシミュレータの計算結果をまとめる。この結果を基に計画研究C02班と議論を交わし、炭素線用イメージセンサの設計・製作を行う。C02班と共に、基本的な動作確認を行った後、群馬大学重粒子線医学研究センターにおいて、がん治療用炭素線場での応答調査を様々な条件下で行い、その性能を定量的に評価する。
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