研究領域 | 3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開 |
研究課題/領域番号 |
26109508
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90323782)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | SOIピクセル検出器 / 超伝導検出器 / X線検出器 |
研究実績の概要 |
本研究は、大きな立体角で半導体検出器を超えるエネルギー分解能でX線を測定する検出器の開発を目指す。そのために、超伝導検出器とSOIピクセル検出器を融合した新規な検出器を提案し、開発を開始した。本研究においては二つのキーとなる開発技術がある。一つ目は、X線の基板吸収によって生じたフォノンを検出する超伝導検出器の開発である。超伝導検出器は、フォノンによってクーパー対が破壊されることにより変化する超伝導体の性質を利用した力学的インダクタンス検出器(KID)を用いる。KIDには、Alを利用し、動作温度は0.3Kである。したがって、極低温に冷却する冷凍機を使用する必要がある。二つ目は、その冷凍機の排熱能力(100uW)以下の超低消費電力を持つSOIピクセル検出器の開発である。SOIピクセルは、300um角の大きさを持つため、100umの位置分解能を持ち、総数約900となる。したがって、一つのピクセルあたり100nWの消費電力にする必要がある。本年度は、この二つの開発事項について並行に行った。 KIDについては、Alで作成し、アルファ線によるフォノン検出に成功した。しかし、検出器の歩留りが6割程度しか達成できなかった。顕微鏡や段差計を用いた調査では、検出器の形状や配線のミスは見つからなかったので、Al薄膜そのものや基板の影響ではないかと考え、現在調査中である。SOIピクセル検出器については、検出器の仕様を決定し、低消費電力を目指した回路設計を、静岡大の川人教授の援護のもと行い、回路シミュレーションで動作確認をしたのち、現在レイアウトを作成中である。2015年5月にそのデザインをサブミットする予定で、性能評価は27年度後半に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Al KIDの歩留りが目標値95%に達成していない。歩留りが悪くなる理由の調査を行っていたが、He-3冷凍機のHe-3ガスの漏れが見つかり、開発進行が滞った。業者に回収してもらい、修理およびHe-3ガスの補充をしてもらい、5月初旬に復帰予定である。このトラブルのために、約3ヶ月ほど予定より遅れた。 SOIピクセル検出器については、仕様の決定・回路の設計・シミュレーションによる動作確認を行っており、現在レイアウトの作成中であり、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Al薄膜で作製するKIDの歩留り改善を目指す。薄膜の質自身の問題なのか、基板による影響なのかを見極めるために、これまで高エネルギー加速器研究機構で作製していたAl KIDを産総研のCRAVITYで作製できるよう準備中である。また、基板としてシリコンを使用しているが、比抵抗がより高いものを用いれば、歩留りが高くなるという報告があるので、新たに高比抵抗基板を購入し、検出器を作製する。この問題に対しては、この二つの点を攻めていく。SOIピクセル検出器については、5月にレイアウトをサブミットし、企業に作製を依頼する。納品は秋ごろを予定している。回路の基本動作を確認し、疑似信号をいれることにより、低消費電力で動作することを実証する。
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