タイプⅡ型Mg-Gd-Zn合金の熱処理による組織および構造変化と水素化挙動について調べた。Mg85Zn6Gd9合金は鋳造状態でMgとZnGdからなる層状組織を形成していた。X線回折の結果、鋳造合金中に長周期性を有する相は観察されなかった。400℃でPCT試験を行ったところ、水素圧が0.1MPa以下で0.2H/M程度の水素を吸蔵することが分かった。さらに、1.3MPa付近で圧力プラトーが観察さた。vantHoff解析の結果、このプラトー圧の成因はMg+H2→MgH2反応に起因することが分かった。4MPaで1.8H/M程度の水素を吸蔵した。水素化後の試料中にはMgH2、GdH3、MgZn2が観察され、試料が完全に分解することが分かった。 Mg85Zn6Gd9合金をアルゴン雰囲気下で400℃で熱処理すると、鋳造状態で観察された層状組織は消失し、ZnGd母相中にMgリッチ相が析出した組織に変化した。X線回折の結果、2θ=4.8℃付近に長周期性を示すブラッグピークが観察された。熱処理によりMgリッチ相中にLPSO相が形成されたと考えられる。この合金を400℃でPCT測定すると、0.1MPaで0.2H/M程度の水素を吸蔵し、1.3MPa付近でプラトー圧が観察された。この合金の水素吸蔵特性は鋳造合金とほぼ同じであった。水素化後には、鋳造材と同様に試料は完全に分解しており、長周期性を有する相は観察できなかった。 以上より、鋳造状態ではLPSO相が観察されない合金でも熱処理によりLPSO相が生成するが、LPSO相の安定性はそれほど高くないため、不均化反応により分解することが分かった。
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