研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
26109709
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
小山 敏幸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80225599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェーズフィールド法 / シミュレーション / 相変態 / Mg合金 / 長周期積層構造 |
研究実績の概要 |
相変態・析出の分野において、LPSO構造形成は、"相"と"組織"の境界領域に位置する現象であると推察され、本メカニズムの解明・理解は材料学的に非常に意義深い。本研究は、LPSO構造形成のメカニズムを、フェーズフィールド法の枠組みにて理解することを目的とし、LPSO構造を"相"とみなしたモデル化を行った(なお比較モデルとして、"組織"とみなした解析も別に行っている点を記しておく)。以下、成果について説明する。 LPSO相形成メカニズムの解釈に、ポリマーアロイ分野の相形成シミュレーション(クラスタ相互作用を陽に考慮したモデル)を適用し、2次元モデル解析を行った結果、以下の結論を得た(LPSO相形成過程を、fccクラスタをベースとした組織形成モデルにて記述している点に注意されたい)。【クラスター相間に斥力相互作用を設定した場合】:(1)高組成合金では、ある程度均一なスピノーダル分解が生じた後クラスタ間の反発相互作用によってクラスタが相対的に6角配置を取るように自己組織化していく。(2) 低組成合金では、一つのクラスタの隣に新しいクラスタが自己触媒的に順次核形成し最終的に整った6角配置の組織となる。【クラスター相間に引力相互作用を設定した場合】:(3) 高組成合金では、ある程度均一なスピノーダル分解が生じた後オストワルド成長を伴いながらクラスタ間の引力相互作用にて6角配置の組織が形成される。(4) 低組成合金では、クラスタ形成の早い領域にてクラスタのコロニーが形成され、その後クラスタの移動によりコロニー間の隙間が埋まり均一な6角配置組織となる。当該分野における先行研究から、規則fccクラスタ間の相互作用が斥力であっても引力であっても、自己組織化したクラスタの集合組織すなわちLPSO相が形成され得ることが実験および理論計算によって示唆されており、本結果はこの知見に一致するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度の研究計画の8割程度は達成できたが、研究計画の最終項目に設定した、実際のMg-Y-Zn系に直接対応した解析が、完全に終了できなかった。現在、Mg-Y-Zn系におけるfcc相およびhcp相のギブスエネルギー関数データを曲線近似し、当該シミュレーションプログラムに適用して解析を順次行っている段階である。この遅れは、本計算理論の構築と計算の安定化条件の設定に、予定外に時間を費やしたことが原因であるが、ここで問題となった点(特に計算安定化条件の設定)はすでに解消済みであるので、研究全体としては、若干の遅れはあるものの、内容的には順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度において、LPSO相形成メカニズムの解釈に、ポリマーアロイ分野の相形成シミュレーション(クラスタ相互作用を陽に考慮したモデル)を適用し2次元モデル解析を行った結果、個々のクラスタが集団的に自己調整しながら相の安定状態が形成されていくこと、またこの形成ダイナミクスは、面内の平均組成に大きく依存することが示された。H27年度は、当該モデルの3次元化を試みるとともに、実際の合金系(Mg-Y-ZnやMg-Gd-Alなど)に対応させ、より定量的なモデルを構築し、LPSO相形成メカニズムの解明をさらに前進させる。
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