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2014 年度 実績報告書

走査トンネル顕微鏡による遷移金属-希土類クラスターの局所配列および物性測定

公募研究

研究領域シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開―
研究課題/領域番号 26109711
研究機関京都大学

研究代表者

黒川 修  京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90303859)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード走査トンネル顕微鏡 / マグネシウム / 組織観察
研究実績の概要

H26年度はSTM(走査トンネル顕微鏡)を用いて,熱処理温度の異なるMg-Zn-Y LPSO相内のZn-Yクラスターの(0001)面内配列に関する情報を得た.
LPSO相内に存在するZn-Yクラスターは従来,Znが6個,Yが8個のL12構造であると考えられてきたが,最近このクラスター中心に原子が一つ追加された構造の可能性が指摘されている.第一原理計算を用いた予備的研究の結果,STM観察およびSTMを用いた局所状態密度計測(STS: Scanning Tunneling Spectroscopy)の手法を用いることで,表面下に存在するクラスターの構造の違い(6-8クラスター内部が空隙か,Mgが入っているかetc)を検出可能であると考えられた.このことから本年度はSTSを用いて,LPSO相の詳細な観察を行った.18R積層の試料において他のクラスターと異なる電子状態を持つクラスターが存在していることを見出した.また10H積層の試料においても同様の測定を行い,2~3種類の異なる電子状態を示すクラスターを確認することができた.現在,観測された電子状態と第一原理計算の結果との照合を試みている.
予想外の興味深い結果も得られた.すなわち,試料電圧を詳細に変化させながらSTS測定を行った結果,STSによってクラスターの積層位置の違いを検出できる可能性があることが見出された.この結果を詳細に検討することによりこれまで不明だったLPSO相内のクラスター配列の成長過程の詳細を明らかにできる可能性がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね申請どおりの進捗状況である.すなわち試料の熱履歴を管理した試料におけるSTM観察,積層の異なる試料に関するSTM観察に成功しており,実験データを取得した.これは申請書のH26年度の研究計画に挙げた内容である.また新学術領域内の共同研究により実験で得られたクラスター配列をシミュレーションにて再現することに成功し,論文として発表することができた.一方,クラスターの内部構造の同定においては,実験的に異なる電子状態をもつクラスターの検出に成功したものの,どのクラスターがどの構造に対応しているかという点を明らかにする第一原理計算との比較は現在のところ完了しておらず,この点は引き続き進めていく必要があると考えている.
一方,当初予想していなかった内容としてSTM/STS観察によってクラスターのC軸方向の積層の違いを検出できることが明らかになった.この情報から濃化層間でのクラスター配列の成長の相関に関する情報が得られると考えられ,LPSO相形成メカニズムの解明に大きなヒントを提供できると考えている.この点は予想以上の進展である.
またH27年度の研究目標としてGdやNiを含むLPSO相の磁性の研究を行うことが予定されているが,本年度は予備実験として,Mg-Al-Gd LPSO相-αMg2相合金の磁化率の温度依存性の測定を行った.その結果180K程度における磁気モーメントの増大が観察されたが,検討の結果これはGdAl2相の磁性である可能性があり,今後の検討課題となっている.

今後の研究の推進方策

H26年度の研究により,Zn-Yクラスターの配列に関する実験データを比較的多く得ることができたので,これらを用いてより詳細な検討を進める予定である.具体的には焼きなまし温度の異なる試料のクラスター間距離の統計を比較検討することで,LPSO相形成メカニズムの解明を進める.もう一つは,これまで原因が不明である3体クラスターの形成する角度分布の異常性の問題を解決したいと考えている.具体的には面内においてクラスターが直線的に配列する傾向を示す実験事実を説明しうるメカニズムを考案する.またH26年度で得られた積層の違いに対応すると考えられる電子状態の違いを,第一原理計算を用いることで,解釈し,ここから得られる知見からLPSO相形成過程を明らかにする.
H27年度に予定されているLPSO相の磁性の研究を本格的に行う.まずはMg-Al-Gd LPSO相の磁性を不純物相の同定,この影響除去することで,明らかにする.またMg-Ni-Y系の磁性の研究を行う,Mg-Al-Gd LPSO相と異なり,Mg-Ni-YはLPSO相がほぼ100%の試料が入手可能であるため,磁化測定の解釈が比較的容易であると考えられる.またSTMによる観察も直ちに可能である.これらのLPSO相で興味深い磁性が観察された場合にはSTMを用いたスピン分極STM観察を行い,個々のクラスターの磁性の測定を試みる予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Two-Dimensional Ordering of Solute Nanoclusters at a Close-Packed Stacking Fault: Modeling and Experimental Analysis2014

    • 著者名/発表者名
      Hajime Kimizuka,Shu Kurokawa,Akihiro Yamaguchi,Akira Sakai& Shigenobu Ogata
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 4 ページ: art# 7318

    • DOI

      10.1038/srep07318

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] LPSO相のSTM/STS観察2015

    • 著者名/発表者名
      斉藤弘樹,黒川修,酒井明
    • 学会等名
      金属学会2015年春季講演大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] LPSO相中の局所構造のSTM観察2014

    • 著者名/発表者名
      黒川 修,酒井明
    • 学会等名
      軽金属学会第127秋季大会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      2014-11-14 – 2014-11-15
  • [学会発表] STM Observation of Local Structures in Closed-Packed Layer of LPSO2014

    • 著者名/発表者名
      Shu Kurokawa, Hiroki Saito and Akira Sakai
    • 学会等名
      LPS2014
    • 発表場所
      Hotel Nikko Kumamoto
    • 年月日
      2014-10-05 – 2014-10-08
  • [学会発表] Mg基LPSO構造における面内構造のSTM観察2014

    • 著者名/発表者名
      黒川 修,斉藤弘樹 酒井明
    • 学会等名
      金属学会2014年秋季講演大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2014-09-24 – 2014-09-26
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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