研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
26109715
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 賢一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335996)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シンクロ型LPSO / キンク変形 / その場観察 / 力学試験 / 3次元形態観察 |
研究実績の概要 |
本研究は,薄片4点曲げ試験を用いてシンクロ型LPSO構造を有する結晶性材料のキンク変形過程を動的に観察する手法を確立すること,ならびに,キンクバンドの3次元形態を収束イオンビーム加工と結晶方位解析を組み合わせることで明らかにすることを目指している。これらの結果より,『キンクバンド発生の起源はどこにあるのか』『キンクバンドの成長はどのように進むのか』という時間分解型のキンク変形過程の研究を通して,当新学術領域研究の目的の一つである新たな材料強化原理の確立に寄与することを目的としている。 平成26年度は,共通試料として提供されたMg-Zn-Y系合金一方向凝固材を研究対象として薄片4点曲げ試験を実施した。応力負荷方向と一方向凝固方向の関係を垂直と平行の2種類の試料を作製して,曲げ応力による負荷を行ったところ,垂直関係にある薄片試料中の圧縮応力が負荷される領域においてキンクバンドの形成が確認された。一方,平行関係にある試料には,引張応力が負荷される領域においてもキンクバンドは形成されなかった。また,高速度カメラにより,垂直関係にある試料においてキンクバンド成長の動的観察に成功した。キンクバンドは隣接する粒界まで応力負荷方向に高速度で成長し,その後,約100分の1の速度で横方向に成長することがわかった。このように薄片4点曲げ試験によるキンクバンドの導入ならびに動的観察手法を確立した。キンクバンドの3次元形態については,現時点ではデータを示すところまでには至っておらず,引き続き実験を進めている。 一方,MAX Phaseと呼ばれるセラミックTi3SiC2焼結体についても薄片4点曲げ試験により亀裂を導入し,亀裂近傍を観察したところ,キンク変形が生じている結晶粒を確認できた。結晶方位解析の結果,キンク変形を起こした結晶粒内に数度の方位変化を伴う塑性変形が生じていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は薄片4点曲げ試験による応力負荷試験ならびに動的観察手法を確立することができた。また,Mg-Zn-Y系合金のキンクバンド形成過程において,結晶方位解析と組み合わせてキンクバンドの性質が結晶方位によって異なることを見出すことができた。MAX Phaseのセラミック材料においてもTi3SiC2の材料選択を完了し,組織観察を行うことでキンク変形が生じていることを確認できた。一方,キンクバンドの3次元形態観察については,現時点では条件設定等を再検討している段階であり,継続して実験を進めているところである。 以上のように,当初の研究目的の達成度はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は引き続きMg-Zn-Y系合金のキンク変形挙動の評価を行うと同時に,MAX Phaseの研究も加速する。具体的には,Ti3SiC2焼結体の組織制御方法を検討し,結晶粒径の大きな多結晶体を作製することを目指す。その上で,薄片4点曲げ試験により導入した亀裂近傍の組織観察を行う。また,キンクバンドの3次元形態観察については,引き続き実験を行っていくが,成果が得られないと判断される場合は,キンクバンド形成に及ぼすLPSO構造の影響について検討を行う。すなわち,平成26年度までは18R構造を有するLPSO相のみを対象としてきたが,14H構造を有するLPSO相についても検討を行うこととする。 以上,平成26年度からの2年間で得られた結果をもとに,キンクバンドの発生や成長に関する知見をまとめ,本研究の総括を行う。
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