本研究は,薄片4点曲げ試験を用いてシンクロ型LPSO構造を有する結晶性材料のキンク変形過程を動的に観察する手法を確立すること,ならびに,キンクバンドの3次元形態を集束イオンビーム加工と結晶方位解析を組み合わせることで明らかにすることを目指して研究を進めてきた。得られた結果より,『キンクバンド発生の起源はどこにあるのか』『キンクバンドの成長はどのように進むのか』というキンク変形過程を明らかにし,当新学術領域研究の目的の一つである新たな材料強化原理の確立に寄与することを目的としてきた。 平成27年度は,昨年度に引き続き,Mg-Zn-Y系合金一方向凝固材を研究対象とした。18R構造を有するLPSO相だけでなく,18R+14H構造の複相組織を有する試料についても薄片4点曲げ試験を実施した。その結果,両試料とも本手法によりキンクバンド形成挙動の動的観察に成功した。また,18Rと14HLPSO相の界面はキンクバンド形成の起点にはならないこと,内部に存在する金属間化合物がキンクバンドの起点になりうることが今年度明らかになった。この結果は,研究代表者らがMg-Zn-Y系合金押出材のTEM観察により得られた結果と一致しており,LPSO相のキンク変形共通の現象であることが認識できた。3次元形態については,本研究期間では明らかにすることができなかった。 また,MAX Phaseに分類されるTi3SiC2焼結体についても引き続きその変形・破壊挙動を調査した。亀裂近傍の結晶方位解析の結果,亀裂の大部分は片側の結晶の(0001)面が粒界面となる粒界を通って進展することが明らかになった。今後の展開を考え,磁場中コロイドプロセスとパルス通電焼結を用いて結晶配向させたTi3SiC2焼結体の作製を行い,配向制御に成功した。この配向焼結体を用いることで基礎的な変形・破壊挙動を調査することができると考えられる。
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