研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
26109718
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高島 和希 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (60163193)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 構造・機能材料 / LPSO / Mg合金 / 破壊 / 材料評価 |
研究実績の概要 |
Mg-Zn-Y合金は高強度軽量耐熱合金として、その実用化に大きな期待が寄せられている。本合金はα-Mg相と長周期積層構造相(LPSO相)で構成されており、LPSO相が本合金の強化に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、本合金の強靭化設計のためには、LPSO相そのものの破壊機構の解明が必要となるが、本合金中に形成されるLPSO相は、作製プロセスを制御しても、粒径数100 μm程度のものしか作製できないため、通常の破壊試験が適用できない。一方、研究代表者らが開発したマイクロ材料試験技術を用いると、一つの結晶粒から試験片を切り出すことで、破壊試験を行うことができる。そこで本年度は、LPSO相一方向凝固材からLPSO相単結晶の微小試験片を作製し、破壊試験を行うことで、破壊挙動及びその結晶方位性について調査した。 LPSO単相Mg85Zn6Y9合金の一方向凝固材(DS材)をブリッジマン法により作製し、EBSDにより結晶方位を同定した後、1つの結晶粒から集束イオンビーム(FIB)加工を用いて、方位が異なる2種類のマイクロサイズ片持ち梁試験片(以後、A試験片、B試験片と呼称)を作製した。また、同じくFIB加工機を用いて微小切欠を導入した。A試験片では、切欠き面を(10-10) に近い面、切欠き方向を [11-20]に近い方向とし、B試験では、切欠き面を(0001)、切欠き方向を[11-20] とした。破壊試験は研究代表者らが開発したマイクロ材試験機を用いて行った。 破壊試験の結果、両試験片における破壊挙動は大きく異なっており、A試験片では柱面での劈開、B試験片では底面の分離によってき裂が発生、伝播していた。また、破壊靭性値は、A試験片で2.2~3.0 MPa m1/2、B試験片で0.9~2.1 MPa m1/2であった。このように破壊挙動に大きな結晶方位依存性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初の目標としていた、Mg-Zn-Y合金におけるLPSO相の破壊挙動について、その結晶方位依存性(破壊挙動及び破壊靭性値)を明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
Mg-Zn-Y合金において、LPSO相を用いた強靭化設計のためには、疲労特性の評価も重要となる。次年度においては、マイクロ材料試験法を用いて、LPSO相の疲労特性の結晶方位依存性を調査する。また、本合金では、キンクが破壊、疲労特性に大きな影響を与える可能性がある。そこで、キンクを導入した試験片において、破壊、疲労挙動を調査し、破壊、疲労に及ぼすキンクの影響についても調査する。加えて、上記の結果を総合的に検討して、LPSO相による強靭化設計法の提案を行う。
|