Mg-Zn-Y合金において、LPSO相を利用した強靭化設計を考える上では、引張・破壊特性に加えて、疲労特性の解明も重要となる。特に、切欠き先端等の応力集中部からのき裂発生・伝播機構を知ることが、本合金の実用化を目指す上できわめて重要である。そこで本年度は、LPSO単相一方向凝固材(DS材)から切欠き付き微小CT破壊試験片を作製し、LPSO相単結晶の疲労き裂伝播挙動及びその結晶方位依存性について調査した。 LPSO単相Mg85Zn6Y9合金のDS材をブリッジマン法により作製した。このDS材についてEBSDを用いて方位を同定した後、目的の方位を有する1つの結晶粒に切欠きを導入した微小CT試験片を微細レーザ加工により切り出した。このとき、切欠き面及びその方位が異なる2種類の試験片(以後、A試験片、C試験片と呼称)を作製した。A試験片では、切欠き面を(10-10) に近い面、切欠き方向を [1-210]に近い方向とし、C試験片では、切欠き面を(0001)、切欠き方向を[1-210]に近い方向とした。疲労試験は室温・大気中で、繰り返し周波数0.1 Hzで実施した。加えて、き裂の伝播挙動を試験機に設置した白色干渉計にて観察した。 A試験片においてき裂は切欠き方向から約30°傾いた方向に発生し、そのまま伝播した。白色干渉計を用いてき裂先端部を観察したが、すべり帯の発生は認められなかった。このことから、疲労き裂はき裂先端における交互のせん断変形による面分離ではなく、他の機構により伝播したものと推察される。C試験片では、き裂は切欠き方位に平行に伝播していた。白色干渉計でき裂先端部を観察したが、C試験片においても、すべりの発生は認められなかった。破面を観察したところ、破面に平行なファセットが観察された。このことは、この方位における疲労き裂の伝播が、底面劈開と関連していることを示唆している。
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