研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
26109721
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
城 鮎美 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 博士研究員 (60707446)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2016-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 金属物性 / 放射光 / その場観察 / 粒内ひずみ分布 |
研究実績の概要 |
【研究の意義、重要性】 周期的な積層変調と濃度変調が同期したシンクロ型長周期積層(LPSO)構造相を強化相としたLPSO型マグネシウム合金は、キンクバンド強化により優れた機械的特性が発現すると考えられているが、キンク帯の形成機構は未解明である。そこで、本研究は放射光を利用したミクロ、原子スケールでのひずみ評価の観点から、LPSO型マグネシウム合金の大きな特徴であるLPSO構造の変形と強化機構の解明を目的とする。LPSO構造の変形機構、キンクバンドの発現機構を明らかにすることで、LPSO型マグネシウム合金における機械的特性のさらなる向上や、他の新規材料への応用が期待される。 【具体的内容】 平成26年度はLPSO型マグネシウム合金の変形負荷中のその場測定を実施するため、小型圧縮装置を製作した。小型圧縮装置はサーボモーター式で、圧縮荷重は最大2kNまで負荷が可能である。製作した装置を大型放射光施設SPring-8に設置されている原子力機構専用ビームラインBL22XUの4軸回折計に搭載し、2次元検出器と組み合わせて、負荷中その場ひずみ・応力評価システムを構築した。構築したシステムにより、新学術研究の共通試料A1(Mg85-Zn6-Y9一方向凝固材(18R構造))のひずみ測定を、基本反射、超格子反射を利用した通常の回折法によって実施し、以下のことを明らかにした:(1)格子ひずみと応力-ひずみ線図の傾向は一致する。(2)単位格子内の特定の原子(もしくは層)が変位している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は放射光を使用したミクロ、原子スケールでのひずみ評価の観点から、LPSO型マグネシウム合金の大きな特徴であるLPSO構造の変形と強化機構の解明を目的としており、ひずみ評価は基本反射・超格子反射を利用した通常の回折法以外に、異常分散法の応用による新たな手法開発を行うことで、特定の原子間変位の評価までを視野に入れている。 平成26年度は基本反射・超格子反射を利用した通常の回折法によるひずみ評価を実施するため、(1)負荷中の測定を実現させるための圧縮負荷装置の開発、(2)2次元検出器を組み合わせた負荷中1結晶粒内その場ひずみ・応力評価システムの構築、(3)LPSO相の1結晶粒内の結晶方位、ひずみ分布を明らかにする、この3点を達成目標としていた。このうち、(1)、(2)については達成済みであり、(3)についても実験は成功し、現在は詳細な解析を進めているところである。以上の進捗状況からも、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は基本反射・超格子反射を利用した通常の回折法によるひずみ評価を実施したが、平成27年度は異常分散法を応用した新たな手法開発に取り組み、特定の原子間変位の評価を行うことで、キンクバンド周辺ならびにLPSO相1結晶粒内ひずみ分布を明らかにすることを目標としている。また、平成26年度の実験より、試料表面のキンクバンド観察が極めて重要であったことから、小型圧縮装置とデジタルスコープを組み合わせ、ひずみ評価の他に試料の様相についてもデータを蓄積しながら、その場ひずみ評価を行う予定である。目的を遂行するに当たり、平成27年度は以下の到達目標を掲げる。 (1)デジタルマイクロスコープを導入し、小型圧縮装置と組み合わせることで、試料表層の観察とひずみその場測定が同時に行えるシステムを構築する。(2)キンクバンドが導入された試料を対象に、平成26年度に測定した条件よりもさらにX線の照射領域を小さくし、キンクバンド周辺のひずみ分布を明らかにする。(3)異常分散法を利用した特定の原子間変位よりひずみを算出する測定評価技術を開発し、測定に役立てる。(4)(3)で開発した技術により、LPSO相における原子レベルでの変位を明らかにし、変形挙動のモデルを構築する。
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