公募研究
不揮発性抵抗変化型メモリは抵抗変化が高速であり、大きな抵抗変化比を保ったまま微細加工できるために次世代メモリとして期待されている。酸化物(Ox)を金属電極(Metal)で挟んだM-Ox-M構造における抵抗スイッチ効果を利用した開発が活発に行われており、本研究では、第一原理シミュレーションを基に、その伝導パスの形成過程と構造熱揺らぎに着目した研究を行った。具体的には、実験報告のあるタンタル酸化物を利用した系について検討した。まず、タンタル酸化物の結晶構造と酸素欠陥導入による構造変化と電子状態変化を調べた。構造最適化計算さらには第一原理分子動力学計算によって、λ-構造が最も安定であることを確認した。その後、酸素欠陥を様々な位置に導入した。Ta-O平面内での酸素欠陥が最も安定であり、これは平面内で大きな構造変化(再配列)が生じるためである。500 Kで分子動力学計算を行ったところ、Ta-O平面構造が大きく揺らいでおり、その結合ネットワークの再配列が酸素欠陥の移動を促進していることが分かった。次に、アモルファス構造を検討した。組成比を変化させて構造を調べたところ、O-richである構造からO-deficiencyの構造へ酸素原子が移動することで、導電性が発現することを予測した。最後に、タンタルを電極としたM-Ox-Mモデルを構築し、第一原理伝導計算による輸送特性と第一原理分子動力学法による安定性の解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
(1)タンタル酸化物の結晶構造と酸素欠陥導入による構造変化と電子状態変化、(2)アモルファス状態のタンタル酸化物の構造と電子状態、(3)M-Ox-Mのモデル構築と第一原理伝導計算、の3つの課題に順に取り組んでおり、一定の成果が得られている。
引き続き、タンタル酸化物を用いたM-Ox-M構造による抵抗変化現象の解明を目指し、第一原理分子動力学シミュレーションを用いた構造決定と第一原理伝導計算による輸送特性を検討する。特に今年度はアモルファス構造を検討し、組成比を変えた場合、または組成比の異なる二つの層を接合した系について、界面における酸素原子の挙動に着目し、伝導パスの生成と消滅メカニズムに関する知見を得る。得られた成果は学会や誌上にて積極的に発表する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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