研究実績の概要 |
本研究は、環状のシロール骨格をシリコン表面で形成することを目的とし、水素終端化Si(100)表面とジヨードビアリール化合物をPd触媒を用いて反応させ、表面上の構造について解析を行った。ジヨードビアリール化合物がSi(100)表面に固定化されるか検討するために、dimethyl 2,2’-diiodobiphenyl-4,4’-dicarboxylateを水素終端化Si(100)表面に反応させた。この化合物は官能基にエステルを持つため、IRを用いた存在の検出が比較的容易である。反応を行った基板の表面IRスペクトルの結果を次に示す。1430 cm-1にシリコン原子―アリール基に由来するピーク、1597 cm-1にC=C二重結合に由来するピーク、1718 cm-1 にエステルのC=O二重結合に由来するピークが観測された。これらのピークが観測されたことから、Si(100)表面上に固定化されたことが確認できた。次に、ジヨードビアリール化合物がSi(100)表面に化学的に固定化されているか検討するために、2,2’-diiodobiphenylの固定化と、X線光電子分光(XPS)を用いた解析を行った。ピークフィッティングを行ったXPSスペクトルを次項に示す。シリコン基板に由来するSi-Si結合より高エネルギー側に、シリコン基板とアリール基のSi-C結合に由来するSi-C結合のピークが観測された。Si-Si結合に対するSi-C結合のエネルギーシフト値は2p1/2ピーク、2p3/2ピークともに0.25 eVであり、文献値(0.27 eV)と概ね合致していた。このことから、Si-C共有結合を介してSi(100)基板に化学的に結合されたことが確認できた。
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