公募研究
本研究の目標のひとつは、これまで40K程度に留まっていた、有機磁性‐導電性共存系における磁気抵抗発現温度をさらに引き上げることである。昨年度、新たな分子設計により、磁気抵抗比は-0.2%と小さいものの、室温付近で負の磁気抵抗を発現する系を見出した。しかしながら、この系が室温付近で負の磁気抵抗を発現するのは3回対称性を持つという分子の特殊性によるもので、広範に適用可能な手法ではない。そのため、分子間相互作用によるスピン分極の低下を低減することで発現温度を向上させる目的で、スピン分極ドナーを単層カーボンナノチューブ上に分散して吸着させることを試みた。単成分結晶では導電性が低く、これまで負の磁気抵抗が観察されていないスピン分極ドナーのESBNを用いたところ、室温から極低温までの磁気抵抗測定が可能となり、さらに200K付近まで負の磁気抵抗の発現が認められた。但し、磁気抵抗比は最低温の2Kで-1.8%と小さく、スピンの存在密度が小さいことが原因と考えられる。この手法は、これまで磁気抵抗測定の適用範囲外であった導電性を持たない様々なスピン分極ドナーにも適用可能であり、さらなる発展が見込まれる。関連する研究として、シクロファン型ドナー分子のイオンラジカル結晶において、直交する異なる2つの結晶軸方向の導電性が互いに制御可能なことを見出した。同じ軸に繰り返し電流を印加すると徐々に抵抗が減少していく様子が見られ、その際直交方向では逆に抵抗が増加する。この制御は相互に繰り返し行うことができ、電流によって動作する切替スイッチとみなすことができる。本新学術領域研究全体の大目標である、分子によるコンピューティングや脳型コンピューターの実現に資する成果といえる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Journal of Materials Chemistry C: Materials for Optical and Electronic Devices
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