研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
26110512
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岸田 英夫 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40311633)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子集合体 / 電荷不均化 |
研究実績の概要 |
(1)秩序状態を示す物質の探索と光学応答の研究 多環芳香族炭化水素の一つであるコロネン分子と種々のカウンター分子との錯体がこれまで報告されている。その物質群においてコロネンが陽イオンとなる錯体の報告は(coronene)3Mo6Cl14の一例のみである。この錯体を含む多数のコロネン陽イオン錯体、コロネン中性錯体の電子状態について室温および低温における分光測定を行った。探索物質においては、(coronene)3Mo6Cl14が低温まで明確な電荷不均化状態を示した。価数を反映すると考えられるラマン振動モードの振る舞いを対イオンの価数、結晶構造、分子形状のひずみの観点から詳細に解析した。また多環芳香族炭化水素の一種であるコランニュレンの電荷移動錯体について研究を行った。共昇華法を用いてTCNQとの電荷移動錯体の作成に成功した。光学測定を行い電子状態が電荷移動によって特徴づけられていることを明らかにした。さらに、(coronene)TCNQとの比較から電子状態の特徴を明らかにした。上記物質群以外にもBEDT-TTF錯体における秩序状態の探索を行った。 (2)分子集合体における電場印加状態の研究 α'型BEDT-TTF錯体における電場効果の研究を行った。この物質は、BEDT-TTF分子がダイマー構造をとり、室温ではダイマーモット絶縁体状態をとっている。このα'型BEDT-TTF錯体における電流電圧特性の温度依存性測定を行った。低温領域では非線形伝導を示し、負性微分抵抗特性が現れた。この負性微分抵抗状態において、ラマン散乱測定を行い、非線形伝導状態の電荷状態を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画された内容について順調に進捗している。また、得られた成果について、学会発表および論文発表を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究に加え、必要に応じ、抵抗率の高い物質群や秩序状態の変化に対し明瞭な光学応答を示す物質系に対象の拡張を検討する。例えば高分子集合体や種々のπ電子系物質、有機低分子系、ラジカル分子系、金属錯体についても検討を行うことを検討している。特に電場に対する顕著な光学応答の変化が得られるよう、広く物質探索をすすめる。これらの物質を対象として、外場により制御された状態の光学応答について研究を行う。
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