研究領域 | 分子アーキテクトニクス:単一分子の組織化と新機能創成 |
研究課題/領域番号 |
26110518
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 恵 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50437373)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 確率共鳴 / 単分子 / カーボンナノチューブ / 分子素子 |
研究実績の概要 |
26年度の具体的な研究計画として①ボトムコンタクト型SWNT-FET作製条件の確立、②雑音パワースペクトル計測システムの構築③CNTへの分子修飾による雑音増幅効果の計測④シミュレーション法によるランダムテレグラフノイズの発生源特定 の項目を目指して研究を進めた。 ①ボトムコンタクト型SWNT-FET作製条件の確立:分子修飾による表面改質によって、安定して電極間にSWNTを架橋させることに成功した。また、SiO2と電極の段差を変化させることで、より段差のない平坦電極の方がより多いSWNTを架橋させることが判った。これらの結果をApplied Physics Letters 105 (2014) 93506 に発表した。また、確率共鳴の発現に必要な非線形応答システムとして、SWNT-Cr素子の強いI-V非線形性を見出した。 ②雑音パワースペクトル計測システムの構築 及び③CNTへの分子修飾による雑音増幅効果の計測:上記手法によって確立した作製手法によって作製したSWNT-FETの雑音周波数特性を計測したところ、典型的な1/f雑音が観測された、そこで高い酸化還元反応活性が期待できる有機分子三種をSWNTに修飾させたところ、大きな雑音増加効果が得られた。分子によっては全く雑音効果が増加しない分子もあり、明確な分子依存性を示すことが判った。よってスペクトラムアナライザー、バッテリー駆動によるDCボルテージ印可装置、電磁シールド環境を整備し、デバイス作製と共に雑音スペクトルを計測する実験環境を整備し、より詳細に制御した環境における実験を行ったところ、分子のチャージトラップ揺らぎに依存した雑音スペクトルが観察された。 ④シミュレーション法によるランダムテレグラフノイズの発生源特定:数値シミュレーションによってノイズを個々のランダムテレグラフノイズに分解し、雑音発生分子の数を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブの自発的雑音発生を目指し、分子修飾によって単分子のチャージトラップの揺らぎに起因する雑音発生を計測することに成功した為。その基本メカニズムにおいて領域全体の目標である「単一分子の機能を利用する」に合致し、今後の現象の理解と利用とが大いに期待される段階に有る為。
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今後の研究の推進方策 |
ノイズシミュレーションとの比較、及び濃度変化実験によるRTS発現の頻度変化、他種分子の利用等を行い、RTSに関与する分子の個数や、電荷トラップサイトのエネルギー等の定量的な見積もりと、現象のさらなる定性的な理解を深めていきたい。またこれらの雑音発生による確率共鳴現象の発現を実証していきたい。
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