公募研究
1. PV陽性GABA細胞選択的脱落モデルのtripartite synapseと細胞外糖鎖の検討:GAD67ヘテロ欠損(GAD67+/GFP)胎仔の母体にストレスをかけた出生仔を生後21日目に屠殺し、脳切片を作成し、抗PV抗体、抗GFAP抗体、Wisteria floribunda agglutinin(WFA)染色の3重免疫染色を行った。海馬と内側前頭皮質でPV陽性GABA細胞が選択的に減少しており、それに伴って、perineuronal net (PNN)陽性細胞が有意に減少していたが、WFA染色強度に有意差は無かった。また、PNNを伴わないPV陽性GABA細胞も減少していた。2. PV陽性GABA細胞選択的に蛍光蛋白を発現するマウスの作製:PV-Cre transgenicマウスとレポーターマウスを交配し、PV陽性GABA細胞選択的にtdTomatoまたはEGFPを発現させる予定であったが、京都大学よりPV/myrGFP-LDLRct BAC transgenicマウスの譲渡を受けることができたので、PV陽性GABA細胞選択的にEGFPを発現する確率がより高い(90%以上)このマウスを使用することにした。3. PV陽性GABA細胞-アストロサイトtripartite synapse同定と細胞外糖鎖除去法確立:脳スライス標本を作製し、sulforhodamine 101(SR 101)で約20分間インキュベートすると、アストロサイトに選択的にSR 101が取り込まれた。これによりPV陽性GABA細胞(GFP)アストロサイト(SR101)のtripartite synapseを同定できるモデルの作成に成功した。スライスをchondroitinase ABCで1-2時間還流したのち固定して、PNNが除去されたことをWFA染色法で確認できた。これによりPNNが電気生理学特性に与える影響を解析するモデルの作成に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画ではPV-Creトランスジェニックマウスとレポーターマウスを交配し、PV陽性GABA細胞選択的に蛍光を発現するマウスを作製する予定であったが、PV陽性GABA細胞選択的に、しかもより高い確率で蛍光(GFP)を発現するマウスを入手することができた。しかもこのPV/myrGFP-LDLRct BAC transgenicマウスはホモ接合体なので、繁殖が容易で、かつ他の蛍光を発現するマウスとの交配で、PV細胞と他の細胞(例えばアストロサイト)を同時に同定することも可能となるので、このマウスを使用することにした。予定の大部分を実行でき、上記以外は特に予定した計画の大きな変更もなく、残りの計画を今年度で達成する目途ができた。学会や論文としての公開も順調にできている。
1.PV陽性GABA細胞と細胞外糖鎖が選択的に脱落したモデルの行動解析:GAD67ヘテロ欠損(GAD67+/GFP)胎仔の母体にストレスをかけると、生後にPV陽性GABA細胞とPNNが選択的に内側前頭皮質で減少する。このモデルの以下の行動解析を行う。認知機能評価:空間的参照記憶課題で場所学習機能を評価し、さらに報酬コーナーを変える逆転学習課題を行う。また、空間的作業記憶課題を与えて、空間認知における作業記憶障害の評価を行う。衝動性・注意機能評価:報酬に対してランダムに遅延時間が挿入され、反応時間の潜時で衝動性・注意機能を評価する。また、遅延価値割引課題でさらに詳しく衝動性を評価する。2.PV陽性GABA細胞選択的脱落モデルの細胞外糖鎖の種類と局在の解析:上記モデルの切片を作成し、抗PV抗体、WFA染色法(PV細胞の一部のPNNを認識)、抗アグリカン抗体(PNN全般を認識)を用い、PV陽性/陰性細胞各々のPNNの種類を解析し、細胞種によるPNN種の違いと脱落状態を解析する。3.細胞外糖鎖脱落したモデルの電気生理学的解析:PV陽性GABA細胞蛍光(GFP)マウス脳スライスをchondroitinase ABC (0.1 unit/mL)で1-2時間還流してPNNを除去し、自発性GABA作動性シナプス後電流の頻度や振幅・decayなどを解析する。あるいは、1.のモデルの脳波を解析する。4.PV陽性GABA細胞と細胞外糖鎖が選択的に脱落したモデルの網羅的DNAメチル化解析:1.のモデルの脳組織を回収し、PBAT/RRBS法で、次世代シーケンサーを用いて網羅的DNAメチル化解析を行い糖鎖合成酵素の変化を解析する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 9 ページ: -
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http://www.hama-med.ac.jp/uni_education_igakubu_igaku_seiri1.html