研究実績の概要 |
1.PV陽性GABA細胞と細胞外糖鎖が選択的に脱落したモデルの行動解析:GAD67ヘテロ欠損胎仔の母体に拘束ストレスをかけると、生後にPV陽性GABA細胞とperineuronal nets(PNN)が内側前頭皮質で減少した。生後8週齢雄での行動評価では、衝動性と注意機能に有意は無く、場所学習と逆転学習、作業記憶にも有意差は無かったが、胎生ストレス群で場所学習記憶の保持が低下していた。 2.PV陽性GABA細胞選択的脱落モデルの細胞外糖鎖の種類と局在の解析:上記モデルの脳切片を作製し、抗PV抗体、biotinylated Wisteria floribunda agglutinin (WFA)(PV細胞の一部のPNNを認識)と抗アグリカン抗体(PNN全般を認識)を用い、PV陽性/陰性細胞各々のPNNを解析したところ、PV陽性細胞の脱落に伴い有意にWFAとアグリカンが減少したが、脱落のないPV陰性細胞では両者とも変化なかった。また、WFAやアグリカンの染色強度も解析したが変化なく、PNNの減少は糖鎖形成の障害ではなく、PV陽性細胞の脱落による基質の減少に起因すると結論した。 3.細胞外糖鎖脱落したモデルの電気生理学的解析:マウス脳スライスを人工脳脊髄液中で生保持し、chondroitinase ABC (0.1 unit/mL)で1時間還流してPNNを除去することに成功した。これで今後PV-GFP共発現マウスでPV陽性GABA細胞やシナプスの電気生理学的解析を行えるようになった。 4.PV陽性GABA細胞と細胞外糖鎖が選択的に脱落したモデルの網羅的DNAメチル化解析:1.のモデル脳組織の網羅的DNAメチル化解析をRRBS法で行った。多くの遺伝子のメチル化異常があったが、GABA細胞の発生・移動と糖鎖との関連から、Dlx2, Fktn, Ephb3, Otx2, Nkx6-2、Cdk5r2などと、その関連蛋白質の発現を胎仔脳で調べることとした。
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