研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
26110709
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡島 徹也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20420383)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | EOGT / Notch / ジストログリカン / O-GlcNAc |
研究実績の概要 |
糖鎖修飾は、分泌過程で生じる翻訳後修飾の典型的なものであり、分泌タンパク質や膜表面タンパク質の大半は、何らかの糖鎖修飾を受ける。その中で、O-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾は、一般的には細胞質・核において起きると従来は考えられていたが、申請者らは、小胞体におけるO-GlcNAc修飾反応を見出した。最初の例は、Notch受容体のO-GlcNAc修飾であり、小胞体に局在するEOGTにより触媒される。Notch受容体のO-GlcNAc修飾は、マウス脳組織においても報告されており、本研究では、脳組織におけるEOGTのNotchシグナルの役割の解明を目指した。本年度は、EOGT変異マウスにおける血液脳関門の解析を進めた。Sulfo-NHS-LC-Biotinを用いた灌流実験より、EOGTの血液脳関門が正常に保たれていないことが明らかになった。さらに、免疫組織染色の結果、細胞外マトリックス構成分子の発現レベルの低下や局在の変化が観察された。これらの結果より、細胞外のO-GlcNAc修飾が血液脳関門において、神経組織を保護する役割があることが、明らかになった。 一方、EOGT に相同性を示すGTDC2の遺伝子変異が、脳異常を伴う先天性筋ジストロフィー(Walker-Warburg症候群)の患者に見出された。また、GTDC2はO-マンノシル化されたα-ジストログリカンを小胞体においてGlcNAc修飾することを明らかにした。そこで、本年度はGTDC2によるDGのGlcNAc修飾機構を解析した。siRNAを用いたスクリーニングにより、小胞体並びにゴルジ体に局在すると考えられている複数の糖ヌクレオチドトランスポーターが、GTDC2によるα-ジストログリカンのGlcNAc修飾に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EOGTの神経組織における保護機能の分子メカニズムの解明が順調に進んでいる。また、GTDC2の修飾に必要な新たな分子の単離に成功した。これらの成果をもとにして、次年度の研究の進展が期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
EOGTの神経組織における保護機能の分子メカニズムについて、Notchシグナルとの関連性について明らかにする。具体的には、Notch1やRBPJの変異マウスを利用して、関連性のある表現型が観察されるか検討を行なう。また、網膜組織を用いた遺伝子発現解析より、EOGTは血管内皮細胞に高発現することが明らかになった。そこで、Tie2-Creマウスを用いて、血管内皮特異的にEOGTの発現を不活化した際の、血液脳関門の異常を解析する。また、GTDC2の酵素活性に必要な糖ヌクレオチドトランスポーターの分子機能を明らかにするために、遺伝子を欠損させた培養細胞を樹立し、ジストログリカンの機能の解析を予定している。
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