公募研究
脳の形成に重要な役割を担う糖タンパク質のジストログリカンには、“ポストリン酸糖鎖”というユニークな機能ドメインが修飾されている。ポストリン酸糖鎖は、基底膜成分やシナプス分子といったリガンドと結合するために必要だが、ポストリン酸糖鎖の不全が、脳奇形(Ⅱ型滑脳症)や精神発達遅滞など、中枢神経障害の原因になることが明らかになってきた。ポストリン酸糖鎖が、新しい機能ドメインとして、神経系で重要な役割を担っていることは明白であるものの、その構造・修飾機序・生理機能について、不明な点は多く残されている。そこで本研究では、ポストリン酸糖鎖の構造と修飾機序の全容を明らかにし、また、ポストリン酸糖鎖不全の疾患モデルを用いて、ポストリン酸糖鎖不全症における中枢神経病態を理解することを目的とする。本年度は、ポストリン酸糖鎖が高度に修飾された独自のジストログリカン組み換え体を作出し、質量分析法と糖質化学的手法による構造解析をすすめ、ポストリン酸糖鎖の全容解明を可能にする情報が得られた。また、ポストリン酸糖鎖の形成に関わる修飾分子の同定のため、修飾酵素活性測定系の樹立を行った。更に、中枢神経に特異的なポストリン酸糖鎖不全症のモデルを開発し、その組織病態解析を行い、組織病変の重篤度と、発生過程におけるポストリン酸糖鎖不全の程度に相関があることを見出した。以上の結果は、ポストリン酸糖鎖修飾の分子機序、および中枢神経病態の解明に重要な基盤となる。
2: おおむね順調に進展している
ポストリン酸糖鎖の構造と修飾機序の解明に必要な研究基盤を樹立することができた。また、ポストリン酸糖鎖不全症のモデルマウスを開発し、組織病態解析を行った。研究目的の達成にむけて計画通り順調な成果が得られている。
本年度樹立した実験系を基盤に、ポストリン酸糖鎖の構造と修飾機序の解析をすすめ、その全貌を明らかにする。また、ポストリン酸糖鎖不全症のモデルを用いて、病態の解明およびそれに基づいた治療の可能性を明らかにする。
http://www.med.kobe-u.ac.jp/clgene/
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 8316
doi: 10.1038/srep08316
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e106721
doi:10.1371/journal.pone.0106721
Nat. Commun.
巻: 5 ページ: 3932
doi:10.1038/ncomms4932
Hum. Mol. Genet.
巻: 23 ページ: 4543-4558
doi: 10.1093/hmg/ddu168