研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
26110721
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 糖鎖 / プロテオグリカン / 脳脊髄炎 / 末梢神経障害 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
プロテオグリカン(PG)の糖鎖合成酵素遺伝子についての従来の検討から、ニューロパチーの一部にChGn-1遺伝子にアミノ酸置換および酵素活性の低下を伴う変異がみられることを見出していた。今年度は、中枢神経疾患とChGn-1遺伝子の多型の関連を検討するために、多発性硬化症患者について検討した。その結果約1割程度の患者に酵素活性の低下を伴うSNPが見出されたが、同様のSNPは正常対照者にも同程度の割合がみられ、発症機序との直接の関連は少ないものと考えられた。しかし臨床経過をみると、同SNPをもつ男性症例は疾患の増悪の速度が低かった。PGは中枢神経のマトリックスを構成する分子であり、多発性硬化症の経過を関連する可能性が考えられる。同SNPは男性患者の予後予測因子となる可能性があり、今後さらに症例数を増やした検討が必要である。昨年度までにPGの糖鎖合成酵素であるC6ST-1のノックアウトマウスで、myelin-oligodendrocyte glycoprotein (MOG)の感作による実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)が重症化することを報告した。今年度はケラタン硫酸(KS)の糖鎖合成酵素であるGlcNAc6STのノックアウトマウス(KS-KOマウス)を用いて、同様のEAEの重症度を検討した。その結果KS-KOマウスではEAEの重症度が軽度であった。リンパ球幼弱化試験と受身移入試験の結果からは、リンパ球の活性化と活性化リンパ球が中枢神経に侵入した後の病態機序の両面でGlcNAc6STの活性低下が関与していると考えられた。以上より、糖鎖の改変が免疫性神経疾患の治療に応用できる可能性が示唆された。またIgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチーで、抗MAG活性を示さないM蛋白を伴う症例の約4分の1で、ジシアロシル基を認識するIgM M蛋白がみられること、またそうした例ではIVIgに対する反応の良好な例が多いことを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロテオグリカン糖鎖合成酵素遺伝子の変異の解析、各種糖鎖改変マウスにおけるEAE、自己抗体の解析などで、それぞれ成果が得られており、神経難病の病態におけるプロテオグリカンの糖鎖の意義についての解明がすすんでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように、研究はおおむね順調に進展しており、引き続き従来の解析を継続することでさらに成果が得られると考えられる。
|