研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
26110722
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
藤川 顕寛 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 研究員 (50414016)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / シナプス / 記憶 / 神経可塑性 / 海馬 |
研究実績の概要 |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CS-PG)は、タンパク質にコンドロイチン硫酸という糖鎖が共有結合した分子種で、記憶学習といった神経シナプスの可塑性の制御に関わっている。脳組織で最も主要なCS-PGの一つは受容体型プロテインチロシンホスファターゼ(RPTP)に属するPTPRZである。PTPRZは主に脳神経系に発現しており、その細胞外領域には多数のコンドロイチン硫鎖が結合した非常にユニークな構造をもっている。PTPRZの遺伝子ノックアウトマウスには海馬依存性記憶形成の異常が同定されているが、この分子が記憶形成を制御している仕組みはわかっていない。神経シナプスは、神経伝達物質を放出するプレシナプスとその情報を受け取るポストシナプスで構成されている。シナプスで適切な学習効果が得られるには、プレ及びポストシナプスが学習刺激に応じて協調的に変化して神経伝達効率が最適化される必要性がある。PTPRZの細胞内領域にはタンパク質のチロシン残基に付与されたリン酸化を除去するチロシンホスファターゼ活性を有しており、その細胞外領域にリガンド分子が結合することで、細胞内の酵素活性は調節される(以後、順方向性シグナル)。記憶形成時には、PTPRZが配置されたポストシナプス内に向けて順方向性シグナルを生じさせることで説明できるが、これまで、ペアを形成するプレシナプスに対する制御を示唆する知見はなかった。我々は、正常な脳組織にPTPRZ受容体の細胞外分解断片(以後、CS-PGフラグメントと呼ぶ)が蓄積していることを見出し、CS-PGフラグメントをリガンドとする受容体がプレシナプスに存在する可能性を想定した。本課題では、シナプスにおける双方向性シグナルにCS-PGフラグメントの重要性を検討している。本年度、学習刺激に依存してPTPRZ受容体からCS-PGフラグメントが生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CS型PTPRZフラグメントの大量精製に手間取り、その生理活性とこれをリガンドとして認識する受容体の同定が順調に進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCS型PTPRZフラグメントの精製を行うが、大量精製は難しい。精製品は生理活性の確認にどうしても必要であるため、アフィニティー担体の作成は見合わせて、免疫共沈法など他のアプローチによって受容体分子の同定を検討する。
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